日本食生活学会誌
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ネパール産マスタード油の基礎的研究
Bhunal Govinda Shrestha飯島 健志山本 祐司前川 昭男田所 忠弘
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2003 年 14 巻 2 号 p. 101-106

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抄録

本研究は, 日本で植物油としてその使用拡大が望まれているマスタード油の栄養生理学上の知見を得る目的で, 今回ネパールで食用油として一般的に消費されているマスタード油とその原料となるマスタード種子の化学的組成の分析を行った. 試料となるマスタード油とその種子は, ネパール産を使用し, 一般組成分析ならびにミネラル組成, アミノ酸組成, 脂肪酸分析を実施した. また, さらにβ-カロテン, トコフェロールとポリフェノールの分析を行うとともに抗酸化活性についても測定した. その結果, マスタード種子中の脂質含量は37.1%で, タンパク質のアミノ酸組成は穀類に不足がちな必須アミノ酸のリジンを含むことが示された. また, ミネラル組成からはリン, カリウムと硫黄が主体であった.脂肪酸組成からは, エルシン酸が約47%と高く, マスタード油の主成分を占め, リノール酸やリノレン酸が各11-13%含まれることが明らかとなった. さらにβテン, トコフェロールとポリフェノールも含まれ, 抗酸化活性もゴマ油や大豆油と比較し大差ないことも判明した. よってマスタード油は栄養成分上からも充分価値付け出来る食用油として今後利用拡大を図れる可能性が示された. しかし, エルシン酸が脂肪酸の主体を占めることから心臓に与える影響について今後その摂取量的な問題を含め詳細に検討する必要がある.

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