抄録
本研究では, アンケー十調査の結果により醤油の好みの傾向と消費動向の解明を試みた。これまでの分析によって得られた知見は以下の通りである。主に用いられている醤油の種類は「濃口」であり, 東日本でより多く, 西日本では若干少ない。「淡口」は西日本が主体だが, 北海道・東北でも比較的高い割合で用いられている。また, 北海道・東北, 山陽・九州・沖縄では「昆布醤油」や「新味醤油」など, 昆布だしやうまみ成分を添加したその他の醤油が多く用いられていることがわかった。
消費者の醤油への「こだわり」は, 関東地方周辺で「持っていない」割合が高く, その他の地域では「持っている」割合が高かった。「こだわり」を持っている消費者の関心は, 銘柄, 原料(丸大豆・有機栽培原料), 塩分などであり, 価格のみならず, 使い慣れた銘柄や安全な原料などへの関心の高さがみられた。また醤油の使用法については, 関西から九州にかけての西日本では, 料理に応じて醤油の使い分けをする割合が高く, 北海道や東北でも約半数が使い分けていた。一方で関東・東海・北陸では醤油の使い分けをしない割合が高く, 濃口醤油のみを使う例が多くみられた。
使い分けの差異が生じる要因については, 歴史や伝統などの影響が強いと考えられるが, ついては今後検討していきたい。
醤油の購入先は, スーパーマーケットからが圧倒的に多かった。ついで生協であった。特徴的だったのは, 北陸以西の地域で醤油醸造業者から直接購入する割合が高かったことである。