抄録
配置売薬の活動は古くから全国に見られ、修験を源流とする廻壇配札からの継承であることは先行研究によって明らかにされている。中でも富山における配置売薬は、先用後利の考えの下に、懸場帳という顧客台帳に相当する帳簿によって、緻密な顧客管理を実現したことで名を知られている。越中富山における廻壇配札と配置売薬に関しては、古くから、経済学、経営学、商学、歴史学、社会学などからの研究が盛んに行われているものの、情報・情報システムとしての研究は少ない。小論では、富山における廻壇配札・配置売薬の活動が、情報システム学会が提唱する人間中心の情報システムとしての条件を満たすしくみであることを明らかにし、その有用性について考察する。