情報システム学会誌
Online ISSN : 1884-2135
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存在従属クラス図とバージョン管理に基づく正規化アプリケーション構成法
金田 重郎井田 明男森本 悠介劉 湘涛上野 洸史
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2019 年 14 巻 2 号 p. 39-56

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抄録
オブジェクト指向を採用したアプリケーション設計では,構築・保守容易化の観点から,クラスの正規性が重要である.クラス正規化のためには,(1)インスタンスの存在期間が,インスタンス中の属性値の存在期間と一致し,(2)インスタンスのプライマリーキー(PK)に,インスタンスの全属性値が非推移的関数従属する,必要がある.しかし,現実には,あるクラスのインスタンスに関係した一連の処理のため,他クラスのインスタンスの属性値を,当該インスタンスに属性追加してコピーすることがある.この正規形から外れた属性を,本論文では「View的属性」と呼ぶ.View的属性の追加は,クラスの正規性を破壊し,アプリケーションの保守性を低下させる.この問題を解決するため,本論文では,(1)正規性を満たす存在従属クラスを前提として,(2)View的属性は「多重度=1」によりリンクを追跡して得る事とし,(3)任意の時点での属性値を得るため,インスタンスをバージョン管理する,アプリケーション構成法を提案する.本手法によれば,インスタンス生成時に,辿り先のインスタンスへのリンクを一意に決定でき,結果として,インスタンス生成後の任意時点におけるView的属性値を,少ない処理ステップ数で取得できる.提案手法の実現性を確認するため,公営住宅管理システムの仕様書を参考に,クラス数77の存在従属クラス図を描き,46種の帳票に出現するView的属性が,存在従属関連のリンクを辿って取得できる事を確認した.
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© 2019 一般社団法人 情報システム学会
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