2019 年 2 巻 1 号 p. 1-9
2017年の小学校学習指導要領において,各教科におけるコンピュータ等を活用した学習活動の充実,プログラミング的思考の育成等が示された.それに伴い中学,高校の学習指導要領も内容が更新された.2020年度からの正式な新学習指導要領の施行に伴い,保護者の不安,教育現場からは変化に対応しきれないという不満を聞く一方で,安直な考えを聞くこともあった.そこで,情報教育先進国であるイギリスのナショナル・カリキュラムを概観することにより,我が国の今後の情報教育のあり方を検討するための示唆を得ることを本稿の目的とした.その結果,3つの示唆を得た.①我が国の情報教育はイギリスに比べて,授業時間が圧倒的に少ないため,十分な時間の確保が必要であること,②コンピュータ・サイエンス,デジタル・リテラシー,インフォメーション・テクノロジーに関する教育も,小学校・中学校・高校教育全体に取り入れていく必要があること,③コンピューテーショナル・シンキングの4つの様相,分解(decomposition)パターン認識(pattern recognition)抽象化(abstraction)アルゴリズム(algorithms)を発達段階に応じて学べるようなカリキュラムの必要性である.