抄録
本研究では、宿泊観光地に着目し、観光経済の集積が地方自治体財政に与える影響について、宿泊業就業者数を指標として比較分析を行った。結果、人口 5 万人未満の市町村では、観光経済の集積度と税収には一定の相関があること、特に入湯税等の法定目的税収、市町村民税および固定資産税を増大させる傾向や、地方交付税配分額の根拠となる人口に影響が大きい若年層の流出を抑える傾向があること確認された。一方、人口 5 万人以上の市町村については、観光経済の集積する地域では観光経済による税収効果が低く、観光経済の集積度が高まっても財政指標の悪化や若年層の人口流出が進む傾向が見られ、より効果的な観光地経営戦略が必要と考えられる。