2023 年 35 巻 1 号 p. 5-15
本稿の目的は、観光目的地としての故郷の変遷に着目し、観光者による真正性の探求という観点から分析することで、「故郷を目的地とする観光」の性質を明らかにすることである。近年、故郷は地域活性化を目的とした政策に活用されているが、故郷を訪れる行為は、観光学において明確に位置づけられてこなかった。そこで本稿は、先祖の故地を訪れる「先祖観光」と、古きよき日本のイメージに基づく「ふるさと観光」、そして関係性の枠組みの三点から、故郷概念を整理した。そして、先祖観光とふるさと観光が重なる現象として、「故郷観光」と位置づけた。故郷観光は、観光者自身と故郷との新たな繋がりを創出する行為である。