2023 年 35 巻 1 号 p. 17-33
本稿の目的は、工芸文化の商品化のプロセスにおける体験と人的交流の商品化が、工芸文化にもたらす影響を論じることだ。工芸文化は、生産と消費の循環によって形作られてきた。近年、有形の工芸品を消費せずとも工芸文化を堪能できる、体験・交流型の観光が登場している。本稿では、富山県高岡市における「高岡クラフツーリズモ」を事例に、消費社会論の再魔術化という分析枠組みを用い、ものづくりの現場、「伝統の技」のプロセス、担い手が新たに商品化されていると論じる。消費者(観光客)が体験・交流型観光に満足する一方で、産地の担い手は工芸品の売上に依存しているという構造的なズレが生じていると結論づける。