2018 年 4 巻 1 号 p. 69-77
小稿は,杉原・田口(2019)「ケイパビリティ・アプローチ再考」1における「ケイパビリティ(capabilities)」の重層的な心構えを内包するフレームの展開可能性を,著者らの勤務校である(学)自由学園(以下,自由学園)の“生活教育” にフォーカスし再評価するものである.まず,自由学園創立(1921年)時の創立者の教育観を確認し,続いて,同学園の大学部である最高学部(以下,学部)開学(1949年)時の教育理念を再考することとした.自由学園の創立以来の“生(いのち)のよき経営者” を目指す教育は,同学園の教育の集大成として位置づけられる学部開学以降継承されてきているものであり,特にその“生活教育” に見出されるバランスと実践について理解する上で「ケイパビリティ教育」が一つの重要な指標となることを示唆した.