抄録
フレキシブルで多目的なフレームワークとしてのケイパビリティ・アプローチの汎用性を拡張するために,ケイパビリティの概念整理を行った.その際に,ルーツとしてのネガティブ・ケイパビリティを探るとともに,センの提唱したケイパビリティの定義式を基本とし,ヌスバウムとの比較を通じ,これまでケイパビリティを論ずる際に出されたいくつかのキーとなる概念を,(1) Positive-Negative, (2) Active-Passive, (3) Explicit-Implicit (Potential) の3軸として抽出し,その組み合わせによる静学的な8象限のケイパビリティ・キューブを提示した.さらに,システム論による定義式の解釈を行って,動学的能力と構造変化能力を兼ね備えていることを示した.続いて視座としてのケイパビリティに影響を及ぼすネガティブ・ケイパビリティ,ケア(caring)を概観し,加えて教育的なつながりを確認するために,リベラル・アーツとの関係,さらにはその延長線上に位置するマネジメントとのつながりについて述べた.