抄録
本研究は,教師と児童の関係性の中にある「教える–教えられる」という非対称な関係を問題と捉え,子どもの声を聞き,それに応じる形でカリキュラムをリデザインする「カリキュラム生成」の実現を目指した。総合的な学習の時間を主とした「探求学習」におけるカリキュラム生成のプロセスを分析し,その成果と課題を明らかにするものである。アクション・リサーチによる理論と実践の架橋・往還を目指し,教師と研究者が協働してカリキュラム生成を行った。実践では,児童の声を活かした探求学習を通して,調べ学習に必要な知識・技能を獲得することや探求テーマに関する専門的知識を獲得することだけでなく,児童の意識変容や専門的知識を超えた概念形成を目指した。これらを実現するための工夫として,具体的には,本質的な問いの設定,e-カリキュラムデザイン曼荼羅を活かしたカリキュラムリデザイン,パフォーマンス課題の設定,ルーブリックを用いた評価等を行った。抽出児童5名のパフォーマンス課題や振り返り等の記述から,実践プロセスにおける児童の意識変容や概念形成の様子が明らかとなった。また,教師と研究者との協働によるカリキュラムのリデザインを通して,児童の声を活かした探求学習を実現するカリキュラム生成が行われたことが成果としてとして挙げられる。