抄録
本稿を含む2編の論考「自由学園における農場・植林事業概説(1)~(2)」では、2021年時点で80年が経過した自由学園による農場、植林活動を一貫した「事業」として捉え、その歩みと現状を、資料・証言等に基づき通史的に概説することを目的とする。(1)の本稿では、自由学園の「那須農場」に注目する。
1941年開場の自由学園那須農場は、2021年の自由学園創立100周年時点で満80年を迎えた。その草創期は第二次世界大戦下に重なり、当時の運営主体であった男子部も高等科が開設されて間もない黎明期であった。そうした時代背景の中で確立された理念・精神の基、本事業は自由学園創立者・羽仁吉一から直接の薫陶を受けた卒業生と戦後間もなくして開設された自由学園農学塾の卒業生が中核となり、60年近い長期に渡り自律的に運営された点が特徴である。更に農業生産や人間教育の場としてのみならず、農村部における自由学園の拠点的性格を併せ持ち、様々な社会活動、研究活動が構想され、展開した。本稿では、1.戦前・戦中期、2.戦後期、3.開場60周年以降の3つの時代に分けて全体像を概説する。また那須農場は自由学園最初の植林地と位置付けられ、その範囲は『自由学園植林活動80年通史―自由学園における農場・植林事業概説(2)―』に記した。なお本稿は、『自由学園100年史』第III部第5章「那須農場・自由学園農学塾 第三のキャンパス」の「増補版(100年史関連論考)」と位置付けられる。