関東地方には、従来アブラハヤだけが生息していた。しかし我々は、東京の落合川でアブラハヤに混じって、タカハヤ様個体や両種の雑種と思われる個体が生息しており、タカハヤの侵入による遺伝子移入が起きている可能性を指摘した。本研究では、関東地方の落合川、横瀬川、成木川、タカハヤが優占種である岡山県の4河川、および両種の分布が重複しているとされている三重県と滋賀県の2河川から採集した154個体を用いて、母系遺伝のミトコンドリアチトクロームb のRFLPと外部形態を解析した。その結果、落合川のタカハヤは両種の分布が重複している地域から移入された可能性が考えられた。また、落合川以外の河川にもタカハヤが移入され、アブラハヤと交雑している可能性が示唆された。このような国内外来種の移入が複数の河川で観察されたことは、稚魚放流などによる国内外来魚の移入が、様々な河川で生態系の変化を引き起こしている可能性を示唆している。