抄録
ヒメハヤ属の2種アブラハヤとタカハヤは、形態と分布から識別可能な別種であるが、稚魚は、形態での識別は困難である。我々は、まず飼育観察により稚魚からの成長過程を記録し、両種が識別可能となる体長を調べた。その上で、両種の生息が確認される東京都東久留米市の落合川とタカハヤ分布地域の岡山県苗代川、赤和瀬川、アブラハヤ分布地域の埼玉県横瀬川の4河川から採集したヒメハヤ属の275 個体について、外部形態とミトコンドリアDNA内のチトクロームb領域のRFLP解析を行った。その結果、落合川では、アブラハヤとタカハヤの交雑個体、および両種が生息していることがわかった。また、落合川におけるこれらの魚類の分布を調べたところ、落合川には両種が共存できる場所と両種の雑種が形成される場所がある可能性が示唆された。