日本救急医学会雑誌
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症例報告
急激に進行した高カリウム血症から心停止に至った総腸骨動脈瘤下大静脈瘻の1例
上垣 慎二早川 峰司山崎 圭佐藤 朝之松井 俊尚牧瀬 博丸藤 哲
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キーワード: ショック, CT, 心肺蘇生
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2007 年 18 巻 10 号 p. 701-706

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抄録
総腸骨動脈瘤下大静脈瘻の1例を経験した。症例は69歳の男性。呼吸困難とショックの精査・加療目的に入院となった。造影CT上, 両側総腸骨動脈瘤と動脈相で濃染する拡張した下大静脈を認め, 動静脈瘻が疑われ血管造影を施行し確定診断を得た。術前の血行動態は心拍出量は10l/min, 中心静脈圧は28mmHgと異常高値を呈していた。術前に突然の心停止があったが迅速な心肺蘇生により自己心拍は再開し, 瘻孔閉鎖術と人工血管置換術を施行した。術後の血行動態は著明に改善したが心停止の影響で遷延性意識障害が残存した。第30病日にリハビリテーション目的に転院となった。大血管レベルでの動静脈瘻は非常に稀である。多くは動脈硬化性病変が基盤にあり動脈瘤破裂の一亜型と考えられている。症状は瘻孔の大きさやその拡大速度により多岐にわたるため, 術前の確定診断は困難といわれていたが, 近年ではmultidetector row angio-CTなどを駆使し, 術前に診断することが可能となってきている。治療法は本邦では開腹し瘻孔閉鎖が一般的であるが死亡率は高い。海外では血管内ステント治療の報告も多く, 合併症が多い症例でも良好な成績を残しており, 今後, 本邦での報告が期待されている。大血管レベルでの動静脈瘻などの巨大シャント存在下での血行動態は, 変化が急激であり周術期管理には一層の注意が必要である。
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© 2007 日本救急医学会
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