日本救急医学会雑誌
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原著論文
ER型救急医による小児救急診療の質に関する検討
岩田 充永北川 喜己野々上 智坪井 重樹越後谷 良介岸田 郁美長谷川 正幸
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2008 年 19 巻 5 号 p. 255-261

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抄録
目的:小児救急医療では,時間を問わず小児科医の診察を希望する保護者が多いが,小児救急患者の医療へのアクセス保障のためには救急医も積極的に小児診療を行うEmergency Room(ER)型救急の普及が重要である。ER型救急医による小児診療について理解を促進するためには,質の検討が必須であると考え,ERで診療を受けた小児患者の転帰を調査した。方法:ER型救急医療を行う日本の 1 施設において,年末年始連休にERを内因性疾患で受診し,帰宅後24時間以内にERを再診した小児症例について,再診時の転帰,主訴,受診理由を調査した。再診が無かった症例については他施設への入院の有無について聞き取り調査を行った。結果:期間中に661例が受診,初診後帰宅した626例のうち79例(13%)が24時間以内にERを再診した。再診例のうち59例(75%)は再診時に追加処置は不要であったが, 5 例(6.3%)は入院となった。入院例のうち 3 例は初診時に入院を勧められていたが, 2 例は初診時にER医に帰宅可能と判断されていた。この 2 症例については初診時の重症度の判断が適切でなく24時間以内の再診時に入院治療が必要となったと考えられ,期間中の小児受診例の0.3%に該当した。再診理由の81%は「初診時の症状持続」であった。ERから帰宅後24時間以内に他施設に入院となった症例は認めなかった。結論: ER医が初診時に重症度を適切に評価し得なかった割合0.3%については,これをゼロにするために研鑽を継続し非小児科医であるER型救急医が小児救急診療を行うことについて国民に理解を求める必要がある。医学的に必要性が無くても,症状継続を理由で短時間にERを再診する症例が多いことについては,保護者の不安に配慮し初診時に予想される経過や再診が必要な具体的な症状について明確な説明をする能力が救急医に求められることが示唆された。
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© 2008 日本救急医学会
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