抄録
虚血性腸炎の重症型である壊死型虚血性腸炎は,術前診断が困難なことが多く,死亡率も高いとされている。今回,緊急手術を施行し,救命し得た壊死型虚血性腸炎の 3 例を経験した。症例は, 3 例とも高齢女性で高血圧の既往があり,CTにてS状結腸の狭窄及び広範な結腸壊死を疑う所見を認め,緊急手術を施行した。症例 1 は上行結腸近位側から下行結腸まで,症例2・3は横行結腸肝彎曲部から下行結腸S状結腸移行部まで,一部島状に正常粘膜を残して広範な壁肥厚ならびに粘膜壊死を認めたが,病変の肛門側端に器質的狭窄はみられなかった。 3 例ともに結腸亜全摘・上行結腸人工肛門造設術を施行し,術後経過良好にて軽快退院した。病理組織学的に壊死型虚血性腸炎と診断したが,症例1は高度の便秘,症例2・3はOgilvie症候群が契機になった可能性が疑われた。高齢者のイレウスでは本疾患を念頭に置き,腸管壊死が疑われた場合は躊躇せず緊急手術を行うべきである。