2001 年 28 巻 7 号 p. 320-324
本研究では心臓外科手術前後の高齢者と若年者の運動耐容能などの差異を検討した。待機的に心臓外科手術を施行した35症例を65歳以上の高齢者(以下E群)と65歳未満の若年者(以下C群)の2群にわけ,運動耐容能と呼吸機能および下肢筋力を経時的に評価した。その緒果,E群ではC群に比較して術前より有意に運動耐容能が低かった。また嫌気性代謝閾値での酸素摂取量(以下AT VO2)はC群で術後に一時的に低下した後改善し,最高酸素摂取量(以下Peak VO2)は両群で術後に一時的に低下した後,退院時には改善した。肺活量(以下VC)は,両群ともに術後に有意に低下したものの,退院時には有意に改善した。1秒量(以下FEV1.0)はE群では術前術後を通しC群に比し低値のままであったが,C群では術後に低下した後若干の改善傾向を認めた。また筋力はC群では術後有意に低下したが退院時には改善した。しかしE群では術後に低下するものの,退院時にも改善は見られなかった。もともと筋力の低下した高齢者では,QOL(Quality Of Life)を改善する目的で筋力トレーニングが重要と考えられた。今後,高齢心疾患患者が増加する事につれ本来の活動能力の低下や合併症を持つ高齢患者への心臓リハビリテーションを普及させる事により,より早期の社会復帰に努めるべきと考えられた。