抄録
急性期脳梗塞において,recombinant tissue-type plasminogen activator(rt-PA)静注直後に症状の改善とともに,脳血管撮影で側副血行を介した血流の増加を観察することができたので報告する。症例は,突然の右片麻痺と失語で発症した65歳の男性である。頭部CTでは頭蓋内に出血性病変や早期虚血性変化を認めず,経皮的脳血管形成術を志向して行った脳血管撮影では左中大脳動脈水平部の閉塞を認めた。rt-PA静注療法の適応があると判断し,rt-PA静注療法を開始した。投与開始から30分後に神経症状の改善を認めたため,rt-PA静注療法前に留置した血管造影用シースイントロデューサーを用いて脳血管撮影を行ったところ,左中大脳動脈の閉塞は変わらず,左前大脳動脈からの側副血行路を介した血流が増加していた。rt-PA静注療法直後の臨床症状改善には,側副血行の血流増加が大きく寄与している可能性がある。