日本救急医学会雑誌
Online ISSN : 1883-3772
Print ISSN : 0915-924X
ISSN-L : 0915-924X
症例報告
小児鈍的腹部大動脈損傷の1例
小林 辰輔松田 潔岩瀬 史明宮崎 善史雨森 俊介菊地 広子中島 雅人
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 21 巻 7 号 p. 343-350

詳細
抄録
鈍的腹部大動脈損傷は稀な外傷であり,小児発生例は本邦における過去報告例はない。症例は12歳男子で,湖上で水上バイクにぶら下がっていたところ,他の水上バイクが患者の腰部に衝突し,水上バイク間で挟まれて腹部を強打した。近医に搬送後,腹部単純CTにて後腹膜出血を認め,大血管損傷疑いにてヘリコプターで当センター搬送となった。来院時出血性ショック状態で急速輸液・輸血を開始した。造影CTで腹部大動脈損傷と診断した。腹部大動脈造影で,腹部大動脈本幹末端より仮性動脈瘤形成と造影剤の漏出がみられ,選択的動脈塞栓術での止血は困難であった。腹部大動脈に大動脈閉塞バルーンカテーテル(intra-aortic balloon occluder; IABO)を挿入し,バルーンを拡張した後,緊急開腹手術を施行した。腹部大動脈末端後壁に2cm程の縦走する全層性損傷を認め,損傷部を縫合修復し手術を終了した。術後経過良好であり,第16病日自宅退院となった。小児においては,動脈の細さのために挿入に困難を伴うものの,後腹膜開放に先行したIABOによる腹部大動脈遮断は,出血の制御に有用であると思われた。
著者関連情報
© 2010 日本救急医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top