日本救急医学会雑誌
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原著論文
小児重症急性脳症における頭蓋内圧の推移に関する検討
中村 俊紀篠原 真史六車 崇青木 一憲
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2013 年 24 巻 6 号 p. 329-337

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抄録
【目的】小児重症急性脳症における頭蓋内圧(intra cranial pressure: ICP)と脳灌流圧(cerebral perfusion pressure: CPP)の推移と神経学的予後との関連を調査する。【研究方法】後方視的観察研究。【対象】2007年1月から2010年12月までに当院小児集中治療室にてICPモニタリングを行った小児重症急性脳症のうち,基礎疾患のない症例を対象とした。【方法】診療録から後方視的に患者背景,急性脳症の発症からICPセンサ挿入までの時間,モニタリング期間,ICPの最大値とCPPの最小値を調査した。神経学的転帰をpediatric cerebral performance category(PCPC)を用いて転帰良好群と転帰不良群に分け,最大ICPとICP ≥20mmHgであった総時間および最小CPPとCPP ≤40mmHgであった総時間を比較した。数値は中央値(最小-最大)で示した。【結果】15例にICPモニタリングが施行され,診断は二相性脳症9例,急性壊死性脳症1例,その他5例であった。最大ICP 37 (19-59) mmHg,最小CPP 38 (20-48) mmHgであった。ICP ≥20mmHgの症例が14例あった。ICPモニタリングは6 (4-16)日間行われ,ICU入室日数は19 (8-35)日間であった。退室時 PCPCは2: 5例,3: 2例,4: 8例であった。転帰良好群に対し転帰不良群は,最大ICPが高く(40 (16-59) vs. 28 (18-31) mmHg,p<0.05),ICP ≥20mmHgであった総時間も長かった(395 (33-3,600) vs. 16 (0-188)分,p<0.05)。最小CPPとCPP ≤40mmHgであった総時間は両群間で有意差がなかった。【結語】急性脳症では多くの症例でICP ≥20mmHgとなる。神経学的転帰が悪い症例では,良好群より頭蓋内圧が亢進し,その持続時間も長い。
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© 2013 日本救急医学会
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