抄録
71歳,男性。数年前より陰部に紅斑・びらんが出現し,徐々に拡大した。初診時,下腹部から両大腿,陰部に自覚症状のない紅色局面を認めた。生検で表皮内に Paget 細胞の増殖を認め乳房外 Paget 病と診断した。真皮中層から下層に膠原線維の走行の不明瞭化,弾性線維の糸くず状の変性,Elastica van Gieson 染色で弾性線維の変性,Kossa 染色でカルシウム沈着を認めた。病理所見を評価した後に,頸部,鼠径部,大腿部を診察したところ,1~3mm 大の黄色の丘疹が多数集簇していた。頸部病変からも病理組織学的に同様の所見を確認した。乳房外 Paget 病を併発した弾性線維性仮性黄色腫と診断した。高齢でも弾性線維性仮性黄色腫と診断されていない症例が存在しうることに留意すべきであると考えた。(皮膚の科学,13: 421-425, 2014)