日本救急医学会雑誌
Online ISSN : 1883-3772
Print ISSN : 0915-924X
ISSN-L : 0915-924X
症例報告
二次救急医療施設におけるJATECのprimary surveyが効を奏した刺創による内胸動脈損傷の1救命例
市原 利彦川瀬 正樹長谷川 隆一中島 義仁丹羽 雄大佐々木 通雄西村 正士
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 24 巻 7 号 p. 448-452

詳細
抄録
ナイフによる穿通性外傷の中で内胸動脈損傷は鋭的損傷の多い欧米では少なくないが,国内の報告は少ない。今回受傷機転が刺創の21歳の男性が独歩で来院し,救急外来(emergency room: ER)でショックとなり,primary surveyのみでCT等の検査を施行することなく手術に踏み切った。肺損傷を伴った内胸動脈損傷(完全断裂)による左側の大量血胸であり,胸骨正中切開のアプローチにて緊急手術を行い,救命できた症例を経験した。内胸動脈損傷によるショックに対する治療法は種々なものがあり,手術治療,血管内治療(塞栓術),保存的など施設により対応は異なる。本症例に対し,二次救急医療施設における外傷対応の一貫として,JATECの概念の導入により適切な初期治療を行い,preventable trauma deathを回避できたことからその意義は大きいと考えられる。
著者関連情報
© 2013 日本救急医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top