日本救急医学会雑誌
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症例報告
剤型が中枢性呼吸抑制遷延の一因と考えられたエチルチオメトン中毒の1例
新山 修平高須 修中村 篤雄高松 学文山下 典雄牛島 一男坂本 照夫
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2014 年 25 巻 1 号 p. 16-22

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抄録
今回我々は,強毒性有機リン剤であるエチルチオメトン粒剤を自殺企図で服用後,遷延性の中枢性呼吸抑制を来し,その一因に剤型が関与していると考えられた症例を経験した。症例は56歳の女性。既往歴は精神科通院歴があったが詳細不明であった。自宅所有の5%エチルチオメトン粒剤約75gを服毒し,当院救命救急センター搬入となった。搬入時の胃液からはエチルチオメトンが検出された。搬入早期に呼吸抑制を認めたため気管挿管を施行し,その後胃洗浄を行った。さらに消化管除染として活性炭を使用し,また拮抗薬としてアトロピン硫酸塩水和物(以下,アトロピン)を使用した。その後約1か月,能動的指示には比較的従うものの安定した自発呼吸が得られず,人工呼吸器に依存した中枢性呼吸抑制の遷延を認めた。第34病日に人工呼吸器より離脱できた。今回の呼吸抑制遷延の原因は,過去のエチルチオメトン中毒の症例報告から類推すると,粒剤は消化管(胃壁)に強固に付着するとされ,それにより消化管での停滞が助長された結果生じたと考えられた。有機リン中毒の際は,剤型も考慮し,治療,管理を行う必要があると考える。とくに粒剤の場合,胃壁に強固に長期間付着する可能性があり,早期に上部消化管内視鏡検査を施行し,直視下に胃洗浄を試みる必要があると考えられた。また同時に繰り返しの活性炭による消化管除染も必要と考えられた。
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© 2014 日本救急医学会
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