日本救急医学会雑誌
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症例報告
遅発性気道出血に対し肺部分切除術を要した外傷性仮性肺嚢胞の1例
瀧口 徹岩瀬 史明小林 辰輔宮崎 善史牧 真彦松本 学加藤 頼子
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キーワード: 鈍的胸部外傷, 気瘤
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2014 年 25 巻 1 号 p. 29-35

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抄録
症例は47歳の男性。バイク走行中に普通乗用車と衝突し受傷した。ドクターカー接触時,SpO2の低下と動揺胸郭がみられたため気管挿管を行った。病院到着後に低酸素血症と右気胸のため,胸腔ドレーンを挿入した。CTでは右上葉と右下葉に巨大な外傷性仮性肺嚢胞を認めた。入院後,人工呼吸器管理を続け,呼吸状態は安定していたため徐々にウィーニングしたが,遅発性に嚢胞が拡大した。入院第5病日に抜管に向けて陽圧管理を終了したところ大量の気道出血により呼吸不全に至り,入院第6病日にも再度大量に気道出血を認めた。右上葉と右下葉の外傷性仮性肺嚢胞に対し,肺部分切除術を行った。低酸素血症が遷延したため,人工呼吸器の離脱に難渋したが術後10日目に抜管し,術後30日目に自宅退院した。外傷性仮性肺嚢胞は比較的稀な疾患として報告されていたが,外傷診療におけるCT検査の普及により診断される割合が増えている。基本的に保存的加療で軽快すると報告されているが,感染による肺膿瘍,気道出血のコントロールが不能な場合,胸腔内への破裂による気漏の持続時は手術適応となる。本症例において遅発性に嚢胞が拡大した誘因としては,損傷範囲が広く嚢胞径が大きかったこと,人工呼吸器による陽圧管理を施行していたこと,発症部位が胸膜下肺実質であり外側に進展しやすい形態であったことなどが考えられた。遅発性に気道出血を来した機序は,嚢胞の拡大により肺実質損傷が持続的に生じたこと,陽圧管理終了時に血腫が急激にドレナージされたことが想定された。本症例のように,遅発性の気道出血により呼吸不全を合併した外傷性仮性肺嚢胞症例では手術も考慮する必要がある。
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© 2014 日本救急医学会
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