日本救急医学会雑誌
Online ISSN : 1883-3772
Print ISSN : 0915-924X
ISSN-L : 0915-924X
症例報告
補助人工心臓(ventricular assist device)装着中に 脳出血を合併した1例
小泉 寛之北原 孝雄北村 律中原 邦晶今野 慎吾相馬 一亥隈部 俊宏
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 25 巻 2 号 p. 63-68

詳細
抄録

補助人工心臓(ventricular assist device: VAD)は,末期心不全症例に対して心臓移植までの橋渡しとして臨床的に有用であることが知られている。我々はVAD装着中に脳出血を合併した1例を経験したので,その管理と問題点について報告する。症例は41歳の女性。当院循環器内科で拡張型心筋症と診断され,内科的治療を受けるも心不全の増悪を認めたため,心臓移植までの橋渡しとして心臓血管外科にて体外型両心VAD装着が行われた。装着から約3か月後,嘔吐,軽度意識障害を認めた。頭部CTを施行したところ,左前頭葉皮質下出血を認めた。当院のVAD 患者の脳出血時のプロトコールに従い,ビタミンK10mgを静注し,新鮮凍結血漿(fresh frozen plasma: FFP)5U,遺伝子組換え血液凝固第IX因子製剤(ノナコグアルファ)1,000IUを投与してプロトロンビン時間(PT)の国際標準比(international normalized ratio: INR)の正常化を行った。 しかし意識障害の悪化と右片麻痺を認めたため,緊急開頭血腫除去術および外減圧術を施行した。術後創部出血,頭蓋形成時の硬膜外血腫を合併したが,神経学的脱落症状は改善(modified Rankin Scale 0)し,心臓移植待機となった。本邦ではVAD症例は増加傾向にあり,それに伴うVAD装着中の脳出血も増加することが予想される。そのため脳神経外科医もVAD治療やそれに関する諸問題について正確な知識を持ち,脳血管イベント発生時には治療および患者家族への対応など関連科と協力して速やかに応じられる体制作りが求められる。

著者関連情報
© 2014 日本救急医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top