日本救急医学会雑誌
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症例報告
会陰部杙創からの出血に対しTAEで止血した1例
林 伸洋竹本 正明角 由佳井上 貴昭松田 繁岡本 健田中 裕
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2014 年 25 巻 2 号 p. 69-74

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抄録

会陰部杙創に伴う出血性ショックに対して用手圧迫をしたまま経カテーテル動脈塞栓術transcatheter arterial embolization: TAE)を施行し,止血し得た1例を経験したので報告する。症例は74歳の男性。自宅内で高さ50cmの椅子からバランスを崩して転倒し,その際に椅子の脚が会陰部に刺さり出血が止まらないため救急要請となった。会陰部に幅3cm程度の裂創を認め出血多量であったため救急隊員によってガーゼ圧迫がなされていた。来院時,意識は清明で明らかなショック症状は認めなかった。会陰部からの動脈性出血に対し,用手圧迫と尿道カテーテル挿入で止血を試みた。創の深さは約7cmで,創部からの持続する出血に対し用手圧迫を行いつつ造影CTを撮影した。会陰部組織内に造影剤の漏出像を認めたが骨盤骨折は認めなかった。来院から約30分後にショックとなり,止血目的の血管造影検査で右内陰部動脈からの出血を認めたためゼラチン物質で塞栓し止血した。初療経過中に尿道損傷の合併が疑われたため経皮的に膀胱瘻を造設し膀胱造影を行った。腹膜外膀胱損傷を認めたが後部尿道損傷は軽微で,尿道留置カテーテルを留置し,保存的治療とした。入院後は連日の創洗浄を行った。尿道外溢流の消失を確認し29日後に尿道留置カテーテルを抜去し自尿を確認した。創部は感染なく閉鎖し,約1か月後に退院となった。会陰部杙創に対してTAEで効果的に止血し得た報告例は確認できなかった。刺入経路や深さが不明である動脈性出血例では,骨盤腔内への外科的アプローチよりもTAEが侵襲が少なく短時間に出血のコントロールが可能であり有用と考えられた。

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© 2014 日本救急医学会
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