日本救急医学会雑誌
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数量化理論による院外CPA症例の解析
救急救命士制度の導入効果
齋藤 大蔵岡田 芳明金子 直之柳川 洋一石原 諭阪本 敏久佐藤 守夫
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2000 年 11 巻 2 号 p. 43-51

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抄録

1989年から1998年の10年間に当施設に搬入された,1,042例の院外心肺機能停止(oh-CPA)症例を対象とし,多変量解析のうちの数量化II類を用いてoh-CPA症例の転帰に対する救急救命士制度の導入効果を分析した。転帰である心拍再開,生存,あるいは社会復帰したか否かを目的変数とし,転帰影響因子候補として原疾患分類,年齢,目撃者の有無,bystander CPRの有無,搬送時の搭乗員分類(一般救急隊員のみ,救急救命士と一般救急隊員のみ,医師の搭乗),覚知から院着までの時間,そして院着時分類(来院時心肺機能停止,院外心拍再開)を説明変数とし,転帰に影響する項目を統計学的に明らかにした。さらに,心原性oh-CPA (211例)に限定して同様な解析を行なった。その結果,全例を対象とした場合の生存および社会復帰には,院着時分類,bystander CPR,覚知から院着までの時間,年齢,そして原疾患分類が有意に影響していたが,搭乗員分類は関連していなかった。しかしながら,心原性に限定した検討では院着時分類,bystander CPR,時間とともに,搭乗員分類が転帰に影響を与えていた。すなわち,oh-CPA症例を心疾患由来に限定すれば,救急救命士制度の導入効果があることがわかった。今後,更なる転帰改善のためには,院外での心拍再開率の上昇,bystander CPR施行率の上昇,さらには覚知から院着までの時間の短縮を目指さなければならない。

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