日本救急医学会雑誌
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救急医療におけるめまいに対する初期診断
危険な責任病変に対する診断の的確性に関する検討
小山 徹上條 剛志高田 充規子清野 繁宏鹿野 晃日下部 賢治岩下 具美
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2005 年 16 巻 1 号 p. 1-8

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抄録

目的:めまいを訴えて救急外来を受診する患者について,危険な責任病変に対する診断の的確性に関して検討する。方法:2002年4月1日より2004年3月31日までの2年間で,相澤病院の救急外来受診患者数は37,823人であった。そのうち,めまいに関連する病名を中心に約4,000人の電子カルテの記載を調べ対象症例を抽出した。結果:695人のめまい患者がのべ809回救急外来を受診した。この695人の患者の初回受診時において,受診後および入院後に危険な責任病変が診断できたものは42例(6.0%)あった。内訳は,脳梗塞4例,小脳脳幹梗塞15例,小脳脳幹出血7例,徐脈性不整脈6例,頻脈性不整脈3例,解離性大動脈瘤1例,ヘモグロビン値7以下の貧血3例,肝性脳症1例だった。性別(男性),年齢(70歳以上)は危険な責任病変を診断する上で有意な因子であった。危険な責任病変が診断できた42例のうち,もし心電図,血液検査,胸部X線写真をまず先に行った場合,30例(695人のめまい患者の4.3%)において危険な責任病変が診断できないものと推測された。引き続き頭部CTを施行すると21例(3.0%)において危険な責任病変が診断できないものと推測された。さらに拡散強調画像を含む頭部MRIを施行しても,入院後に小脳脳幹梗塞や徐脈性不整脈の所見が明らかになることもあり,5例(0.7%)において危険な責任病変が診断できないものと推測された。結語:注意深い既往歴の聴取と身体的・神経学的所見を得ることにより,多くの場合めまいの危険な責任病変を診断できると思われる。しかし,緊急で拡散強調画像を含む頭部MRIなどの諸検査を行っても,めまい患者のうち0.7%において危険な責任病変を診断できないものと推測された。

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