抄録
目的:来院時心肺停止(CPA)状態で搬送され剖検を行うことができた急性心筋梗塞(AMI)患者36名の冠動脈所見を調査し,突然死と冠動脈所見の関係について検討した。方法:平成9年1月から12年12月までの4年間に当院救命救急センターヘ搬送されたCPA患者で剖検を行い急性心筋梗塞と診断し得た36例について,(1)責任冠動脈,(2)冠動脈病変の数,(3)三大死因(心不全,不整脈,心破裂)別の特徴につき検討を行った。結果:(1) LMT3例(再梗塞2例),LAD11例(再4), LCx11例(再5), RCA11例(再6) (2) LMT病変8例,1枝15例,2枝4例,3枝13例(3)心不全19例(再梗塞63%,p<0.05),不整脈10例(RCA6例,p<0.05),心破裂7例(LAD5例,p<0.05.初回梗塞85%,p<0.05)。総括:原因冠動脈としてはLAD, LCx, RCAともに平均して3割であり,また1枝病変が42%を占め,LMT病変や多枝病変がCPAOAの危険性が高いという知見は得られなかった。死因は心不全死が最多で再梗塞例が有意に多く(64%)ポンプ失調を来した結果と考えられた。不整脈死は刺激伝導型に最も影響を与えるRCAが60%と有意に高かった。心破裂は初回梗塞例が85%, LADが71%と有意に高く,周囲組織のサポートとの関係が示唆された。