抄録
症例は36歳,女性で睡眠薬を服薬し,飲酒後,電気コードを首に巻き,首を吊っているところを母親が発見し救急要請となった。来院時意識レベル300,血圧62/52mmHg,心拍数132/min,整,体温35.4℃であった。胸部X線上著明な肺水腫を認め,心エコー上心尖部を中心に壁運動の低下を認めた。カテコラミン投与下にも血圧の維持は不可能となりIABPを導入した。血圧は上昇し,利尿も得られ安定した。次第に左室壁運動も改善し,第3病日に大動脈内バルーンパンピング(intraaortic balloon pumping; IABP)より離脱することができた。同日施行した左心室造影検査にてたこつぼ型心筋障害の所見を得た。冠動脈造影では有意狭窄は認めなかった。第8病日には心機能はほぼ正常化した。たこつぼ型心筋障害の病因についてはいまだ議論が多く,不明な点が多い。本症例においては急性期の血中カテコラミンは上昇し,カテコラミンの心筋障害が原因ではないかと考える。われわれの知る限りでは,本症例は縊頸に伴うたこつぼ型心筋障害の最初の報告例である。