日本救急医学会雑誌
Online ISSN : 1883-3772
Print ISSN : 0915-924X
ISSN-L : 0915-924X
救急救命士制度運用後の病院外心肺停止例の検討
松田 環
著者情報
ジャーナル フリー

1995 年 6 巻 3 号 p. 240-252

詳細
抄録

プレホスピタルケアの充実のため救急救命士法が制定され約2年が経過した。しかし,その成果を詳細に評価した報告はない。そこで救急救命士法運用後,当センターに搬送された院外心肺停止例の原因疾患,予後および救急救命士の活動内容を検討し,問題点を明らかにした。対象は1992年7月からの18ヵ月間に当センターに蘇生目的で搬送された院外心肺停止431例である。原因疾患は監察医務院での検死,剖検所見も参考にした。原因疾患は心疾患が47.3%と約半数を占めていた。目撃者は62.2%の例で認められ,その予後は目撃者のない例と比べ有意に良好であった。心肺停止の目撃者および発見者によって行われた初期発見者によるCPRは15.8%の例で行われ,その予後はCPRのなかった例と比べ有意に良好であった。このうち一般人によるbystander CPRは7.4%であった。院外心肺停止431例中,救急救命士対応263例(61.0%),一般救急隊員対応168例(39.0%)であった。予後は救急救命士対応例で来院時心拍再開例が多い傾向にあったが,両群間で有意差は認められなかった。救急救命士による特定行為の検討では約半数に器具を用いた気道確保が行われていた。血管確保は成功例が少なかったが,徐々に増加する傾向があった。除細動は38例に救急現場で施行され,病院到着前に6例(15.8%)が心拍再開し,早期に除細動された1例が社会復帰した。しかし現場到着後,除細動施行までに平均12.3分要していた。また医師への連絡の間に除細動適応が約15%の例でなくなった。早期除細動のために処置の手順や医師の具体的指示を必要とする法的規制の早急な見直しが必要である。その際,特定行為の正確な記録とそのチェック体制,より充実した教育体制の確立が必要である。救命率向上には,早期の119番通報や一次救命処置など一般市民への教育や啓蒙は不可欠である。また,気管内挿管や薬剤投与の処置拡大についても考慮する必要がある。

著者関連情報
© 日本救急医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top