日本救急医学会雑誌
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ヒト単球におけるinducible nitric oxide synthase messenger RNAの発現とTNFαの関与について
丹正 勝久島 敦之岩田 光正富田 凉一黒須 康彦
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1996 年 7 巻 8 号 p. 395-400

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抄録

われわれは過去に,単球の誘導型nitric oxide合成酵素(inducible nitric oxide synthase; iNOS)によって産生される多量のnitric oxide (NO)が組織傷害性に作用し得ることを報告した。iNOSは各種サイトカインやlipopolysaccharide (LPS)によって誘導されることが知られているが,その機序は不明である。今回われわれは,in vitroで健常成人培養単球をinterferon (IFN) γおよびLPSで刺激し,iNOS messenger RNA (iNOSmRNA)発現の有無についてreverse transcription-polimerase chain reaction (RT-PCR)法を用いて検討するとともに,単球培養上清NO2値の測定を試みた(Griess法)。さらに代表的な炎症性サイトカインであるtumor necrosis factor (TNF) αのiNOS発現への関与を明確にするため,抗TNFαモノクロナール抗体を用いてiNOSmRNA発現が抑制されるか否かを検索し,また単球培養上清NO2値が変化するかどうかについて検討した。RT-PCR法に用いたprimerはhuman hepatocyte iNOSmRNAの塩基配列をもとに作成した。結果は,IFNγおよびLPSで刺激した培養単球には明瞭なiNOSmRNA発現を認め,単球培養上清のNO2値は高値を示した。これに対し,抗TNFαモノクロナール抗体を添加するとiNOSmRNA発現は著明に抑制され,また培養上清のNO2値は有意に低下した。以上より,ヒト単球においてIFNγ+LPSの刺激によりiNOS誘導に基づいたNO産生が行われることが推察される。さらに,このiNOS誘導はIFNγ+LPSの直接刺激ではなく,これらの刺激により単球で産生されるTNFαがautocrine的に単球を刺激しiNOSを誘導するものと考えられる。

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