日本救急医学会雑誌
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院外心肺機能停止の予後は改善されたか?
救急救命士制度3年目の成果
有馬 健長尾 建櫛 英彦大槻 穣治矢崎 誠治上松瀬 勝男
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1997 年 8 巻 3 号 p. 111-118

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抄録

救急救命士制度導入により,院外心肺機能停止症例の予後が改善したか否かを検討する目的で本研究を行った。内因性院外心肺機能停止例のうち,救急救命士制度発足前('89.4-'92.3)の421例(A群)と,東京都のほぼ全救急隊に救急救命士が配属された平成6年度('94.4-'95.3)の109例(B群)を対象とした。そして,来院時心拍再開率,救命率(1週間生存率),生存退院率,社会復帰率,原疾患などを検討した。来院時心肺機能停止例(以前はDOAといわれていた)の救命率はA群2.4%, B群6.9%でB群が有意に高率であった(p<0.05)。しかし,その生存退院率/社会復帰率はA群1.2%/1.0%, B群2.0%/0%で有意差を認めなかった。一方,救急隊の心肺蘇生法により心拍再開していた来院時心拍再開率はA群2.6%, B群6.4%でB群が高い傾向(p=0.0503)であり,来院時心拍再開例の救命率/生存退院率/社会復帰率は,A群45%/27%/0%, B群100%/100%/71%でB群がそれぞれ有意に高率であった(p<0.05/p<0.01/p<0.01)。この結果,院外心肺機能停止例の救命率/生存退院率/社会復帰率は,A群3.6%/1.9%/1.0%, B群12.8%/8.3%/4.6%でB群がそれぞれ有意に高率であった(p<0.01/p<0.01/p<0.05)。以上より,救急救命士制度の導入により,院外心肺機能停止例の予後が改善したと結論した。

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