抄録
視触診に超音波検査 (以下, US) を併用した乳癌検診を人間ドックで行い, 発見された乳癌症例を分析し, USの有用性について検討した。対象は12年間で14,063名, 要精検率3.4%, 癌発見率0.30%, 陽性反応的中度8.7%と良好な結果であった。US発見乳癌42例中30例 (71%) が腫瘍径1.5cm以下の乳癌であった。視触診の陽性率は, 1.5cm以下で33% (10/30例), 1.6cm以上は100% (12/12例) であった。また, マンモグラフィ (以下, MMG) の陽性率は, 1.5cm以下で39% (9/23例), 1.6cm以上は91% (10/11例) で, USは視触診, MMGに比べ1.5cm以下の小さな癌の検出に優れていた。組織学的リンパ節転移は32例中8例 (25%) が陽性で, 1.5cm以下の乳癌にも高率に認められた。経時的変化が追えた乳癌症例10例の腫瘍体積倍加時間 (TVDT) は不変1例を除き, 4.8~32.5カ月 (平均15.5カ月) で, TVDTの長い症例は1cm前後の小さな癌であった。また, 複数回経過の追えた症例では1cm前後を境にTVDTが変わり, 短くなった。TVDTの長い症例は病理学的悪性度も低く, TVDTの長い小さな癌を検出することは有用であると思われた。