日本乳癌検診学会誌
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超音波による乳癌検診は死亡率を減少させるか
超音波検診で乳癌死を減らすために
佐久間 浩
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2007 年 16 巻 1 号 p. 74-78

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抄録
わが国の乳癌罹患者数を40,000人, その10%が非浸潤癌であると仮定すると, 浸潤癌は36,000人となる。これらがすべて腫瘤径2cm以下で見つかり適切な治療がされれば, その10年生存率は90%であるから乳癌死は3,600人に止まるはずである。しかし現在乳癌死は10,000人を超えている。この差を埋めるために, どのような点に注意して超音波検診を行うべきかを考察する。
まず, 浸潤癌はほぼ全例が腫瘤を形成する。そして超音波は腫瘤の描出を得意とする。熟練者であれば径0.5cmの腫瘤が描出可能である。さらに径1cmの腫瘤となれば0.5cmの腫瘤の4倍の面積の像として描出される。したがって検診の現場においても, 発見すべき腫瘤径は2cmではなく1cmに目標設定をしてもその達成は十分に期待できる。
また, 超音波では浸潤癌のみならず非浸潤癌の発見も期待できる。非浸潤性乳管癌の約35%は腫瘤 (嚢胞内腫瘍, 充実性腫瘤) を形成するので超音波による発見は可能である。それ以外では扁平低エコー像を呈するものが約40%と最も頻度が高い。よってこのパターンを見つける目を養うことが, 非浸潤性乳管癌の発見能を飛躍的に向上させるカギとなる。
直径1cmの腫瘤像と扁平低エコー像の発見に努めれば, 超音波検診で乳癌死を減らすことは可能である。
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© 2007 日本乳癌検診学会
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