抄録
日本に於いて増加し続ける乳癌死亡数の低減に向けて精度の高い検診システムの開発と普及が肝要である。マンモグラフィ検診の普及は急務であるがdense breastの多い40歳代, 50歳代の日本人女性に乳癌罹患率が高いことを考えると, この年代の検診への超音波の導入も早急に検討されるべき課題である。
栃木県保健衛生事業団では, 平成12年度から平成16年度にマンモグラフィと超音波を全例に併用した検診を行った。この間の全受診者は69,220名, 乳癌発見数は170例 (癌発見率0.25%, 要精検率9.5%, 早期癌比率76.2%) である。そして, それぞれの年代別乳癌発見例の検討から各モダリティの相対感度を求めた。その結果, 40歳代では超音波の感度は82.5%, マンモグラフィの感度も82.5%であった。50歳代では超音波の感度は75.9%, マンモグラフィの感度は70.7%であった。すなわち, 40歳代と50歳代ではマンモグラフィか超音波の単独検診を行うと癌発見率は29~17%の低下があることが示された。したがって, この年代の乳癌検診はマンモグラフィと超音波の併用検診が必須であると考えられる。
この年代では超音波のみで見つかる乳癌は小さな浸潤癌が多く, マンモグラフィのみで見つかる乳癌は微細石灰化で検出される非浸潤癌が比較的多い。このことが40歳代, 50歳代で超音波とマンモグラフィが相補的に機能して癌発見率を向上させる理由の一つであると思われる。