日本乳癌検診学会誌
Online ISSN : 1882-6873
Print ISSN : 0918-0729
ISSN-L : 0918-0729
原著
当施設における乳癌無料検診クーポン券の効果
坂 佳奈子渡邉 聡子小野 良樹
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 20 巻 2 号 p. 127-134

詳細
抄録
2009年度の政府が実施した無料クーポン検診に対し,マンモグラフィ搭載車2台を用いて,都内11ヶ所に土日を含め延べ233回の検診を行った。そのうち8ヶ所でアンケート調査を行った。また平成21年度視触診併用マンモグラフィの住民検診に限定し,各プロセス指標についてクーポン群(A群)とクーポン以外(B群)で検討,A群は毎年マンモグラフィ搭載車を派遣している地区(従来群)と初めてマンモグラフィ搭載車を派遣した地区(新規群)に分けて検討した。視触診併用マンモグラフィ検診総数は15,257名,前年度比71%増であった。要精検率はB群4.1%,A従来群4.2%,A新規群6.3%と新規群でやや高い傾向があった。精検受診率はB群66.8%,A従来群70.0%,A新規群60.3%と新規群で低かった。癌発見率,早期癌比率は,それぞれB群0.28%,69.6%,A従来群0.43%,72.7%,A新規群0.22%,44.4%と新規群では進行癌が過半数を占めた。アンケート回答率は72.4%。初回受診者は42.9%。全体の受診理由は「個別通知」が「無料」を上回った。今後の費用の希望では「無料」26.4%,「1000円以内」40.5%,「3000円以内」28.3%であった。【結語】無料クーポンによって初回受診者が多く見られた。しかし,新規群では進行癌症例も多く見られ,検診体制の遅れや低い精検受診率という問題も露見した。無料の1次検診受診のみならず,精密検査(2次検診)の重要性も教育する必要性を感じた。アンケートからは無料よりも個別通知を望む声があり,要望の高い女性スタッフ確保や受診者の検診への意識など課題も多く見えてきた。
著者関連情報
© 2011 日本乳癌検診学会
前の記事 次の記事
feedback
Top