抄録
末梢性乳頭腫は,乳癌検診の導入により発見される機会が増えてきた。乳頭腫は前癌病変・境界病変ではないが,癌を合併しうることが以前から知られている。針生検で乳頭腫と診断された場合の臨床的対応についてはさまざまな考え方があり,コンセンサスが得られていない。われわれは背景に乳頭腫を伴うDCIS の手術症例50例について,乳頭腫とDCIS の分布をマッピングし,画像所見との対応と組織学的特徴を検討し,Histopathology 誌に報告した。今回のパネルディスカッションでは,その内容を踏まえて古くて新しい「乳癌と乳頭腫との関係」について考察した。
乳頭腫を背景に伴うDCIS は区域性の分布を示し,画像所見でも少なくとも一つ以上のモダリティで区域性の異常を呈することが明らかとなった。DCIS と乳頭腫は大部分の症例で複雑に混在し,量的にDCIS 優位なものから乳頭腫優位なものまでさまざまであった。後者では針生検でDCIS がサンプルされない可能性があると考えられる。DCIS は乳頭腫を伴わない症例に比してnon―high grade であることが有意に多かった。また同一乳管内で乳頭腫とDCIS が同居する所見が76%の症例で認められた。このことは乳頭腫とDCIS が同一腺葉系に存在していることを意味している。両者が同一腺葉内で独立して発生した可能性と,乳頭腫内からDCIS が発生した可能性がある。病態発生がどちらであるかは不明であるが,少なくとも画像で区域性の異常を呈する病変の針生検で乳頭腫が検出された場合,癌のサンプリングエラーや後に癌が発生する可能性を念頭に入れ,切除生検または慎重なfollow up が必要である。