日本乳癌検診学会誌
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検診で発見された境界病変の診断と治療
Flat epithelial atypia(FEA)の診断とその取扱い
山口 倫 森田 道山口 美樹大塚 弘子朔 周子田中 眞紀矢野 博久
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2015 年 24 巻 3 号 p. 335-341

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抄録

近年,画像技術の発展によって微細な病変が指摘されるようになった。それゆえ針生検の機会が増え,病理医にとって悩ましい病変が増加している。その多くは乳管内増殖性病変である。平坦型上皮異型(flat epithelial atypia: FEA)は,WHO 分類第3版(2003)から乳管内増殖性病変の一つとして取り上げられた。第4版(2012)ではcolumnar cell lesions の一亜型に分類され,現在世界的に認識されつつある。この間約10年における重要な改定点は,第3版でFEA の同義語としていたclinging carcinoma,monomorphous type を第4版で削除したことである。第4版の改訂では平坦状の低異型度な乳管内病変を癌とせず,過剰診断によるover―surgery を慎むべきであるという意向を踏まえている。 また遺伝子学的観点においては,low grade breast neoplasia の概念が生まれている。FEA は浸潤癌の管状癌や小葉癌と遺伝子異常が類似性を示すことからlow grade family に含まれ,形態的にも実際にこれらの合併が認められる。したがってFEA は前駆病変として捉えるという見方もあるが,low grade neoplasia 自体の浸潤癌へ進行する頻度や悪性度は低く,多くはluminal 癌である。加えて低異型度な平坦状,微小乳頭状乳管内病変は標準化が難しいことから,FEA の診断やその取扱いについては依然見解が分かれている。しかし,これまでの報告からFEA の取扱いには慎重なステップを踏むことが推奨される。病理側は軽度な平坦状異型上皮を積極的に癌と診断しないこと,臨床側はFEAあるいはDCIS,flat~low papillary などの診断を受け取った際に,画像所見との矛盾はないか,慎重に対応することが求められる。

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