日本乳癌検診学会誌
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原著
「女性特有のがん検診推進事業による乳がん検診」における新規受診者の問題点
吉岡 泰彦 古川 順康相馬 孝川西 克幸
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2015 年 24 巻 3 号 p. 379-386

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抄録

緒言;女性特有のがん検診の無料クーポン券(以下,クーポン券)配布により乳がん検診の受診率は上昇した。クーポン券を利用した新規受診者が既設の乳がん検診に定着すれば,さらに受診率が向上する。そこでわれわれはクーポン券を利用した新規受診者を追跡調査した。 対象・方法;吹田市の乳がん検診で,平成21年度のクーポン券を利用した新規受診者977人を追跡し,既設検診へ移行した割合を「累積定着率」として分析した。 結果;累積定着率は追跡2年目で17.9%,3年目で32.3%と3年目で増加した。クーポン券対象年齢と既設検診の対象年齢が整合する群/非整合の群に分けて比較すると,2年目は27.5%/13.6%と差がある(P <0.05)が,3年目は32.4%/32.3%と差がなくなった。 考察;3年目で差がなくなるのは,非整合群に推奨年数よりも長い3年の受診間隔の者が多いためと考えられた。全体でも既設検診へ移行した者の44.6%は受診間隔が推奨より長い3年であった。推奨どおりにクーポン券利用の新規受診者が既設検診へ定着するためには,クーポン券対象年齢の要件を緩和し,既設検診の対象年齢と整合させることが重要と考えた。また,クーポン券に付随する検診手帳は繰返し受診の重要性についての記載が約1行で不十分であることから,検診手帳の記載の改善が必要と考えた。さらに検診手帳を用いた啓蒙の徹底,新規受診者を対象とした対面教育,および受診勧奨葉書の送付などの対策が必要と考えられた。

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