2016 年 25 巻 1 号 p. 51-56
日本乳癌検診学会全国集計委員会では,今回を含め5回にわたり日本乳癌検診学会全国集計(以下,全国集計)を施行してきた。これらのデータを用い,検診施設としての適切な要件を見出すことを目的に今回の検討を行った。方法として,プロセス指標の許容値や目標値について「がん検診事業の評価に関する委員会」と同様の手法(パーセンタイル分析)を用い,その基準値を算出した。また,これまで集計していなかった未把握率についても集計し,検討した。 パーセンタイル分析は検診受診者の少ない施設を含む検診機関を対象とした基準値設定の手法としてはなじまず,都道府県が使用する許容値・目標値と整合性のある妥当な基準は導き出せなかった。未把握率は全国集計では13~20%で,地域保健・老人健康事業報告(対策型検診)に比べて明らかに高かった。したがって,まず未把握率を下げる努力が必要であり,その次の段階として具体的な他のプロセス指標の数値目標を設定すべきと考えられた。また,未把握率を下げ登録精度を上げるためには,精密検査機関からの結果のフィードバックも重要である。精密検査機関への働き掛けを推進するとともに,全国集計参加施設には各施設のプロセス指標値や未把握率を告知するなどの施策により,より精度の高い全国集計につなげたい。