抄録
症例は71歳,女性。肝嚢胞性疾患の精査目的に施行されたFDG―PET/CT にて両側乳房に30mm 超の高集積(SUVmax:4.9,5.0)を認め,両者とも胸筋への浸潤を伴う乳癌が疑われため精査目的に当科紹介となった。20歳頃に豊胸目的での注射の既往が確認されたため,異物性肉芽腫の鑑別が必要となった。乳腺造影MRI 検査を追加した。両乳腺腫瘤とも脂肪抑制T2強調像で軽度の高信号を示し,造影はslow―persist 型で,拡散強調画像では低信号であった。良性疾患の可能性が示唆された。針生検(CNB)の病理診断では,左右とも線維性脂肪組織を認め,脂肪細胞様の細胞はCD68陽性でS100蛋白陰性で組織球やマクロファージであり,脂質を含む異物に対する異物肉芽腫(lipogranuloma)と考えられた。シリコン注入による肉芽腫が疑われた。定期的な外来診察では形態の変化を認めていない。シリコン肉芽腫の診断には豊胸術の既往歴を問診することが重要で,画像診断としては乳腺後隙や胸筋に腫瘤が存在することが鑑別診断の一助となると考えられた。
シリコン注入による豊胸術後のFDG―PET 偽陽性の報告例は少数である。同肉芽腫に乳癌が混在している場合の診断は困難であると思われた。造影MRI による評価が有用と思われるが,確定診断にはCNB 等の病理診断が必須であると考えられた。