日本乳癌検診学会誌
Online ISSN : 1882-6873
Print ISSN : 0918-0729
ISSN-L : 0918-0729
25 巻, 2 号
選択された号の論文の24件中1~24を表示しています
第25回学術総会/特別企画
J-STARTはどのように行われたか――大規模RCTの企画,運営,集計の経験
  • 2016 年 25 巻 2 号 p. 98-99
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
  • 石田 孝宣, 鈴木 昭彦, 成川 洋子, 鄭 迎芳, 大内 憲明
    2016 年 25 巻 2 号 p. 100-103
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
    Average risk を対象にした超音波検診の有効性を検証するための世界で初めての大規模無作為化比較試験(randomized controlled trial: RCT)であるJ-START のプライマリ・エンドポイントの結果がTHE LANCET 誌に発表された。日本では,このような大規模のRCT そのものが初めての経験であり,あらゆる面で前例のない手探りの状況からの研究開始であった。 J-START は,ご参加いただいた76,000名を超える40歳代の女性,全国の研究参加団体(検診施設),精密医療機関,厚生労働省,日本医療研究開発機構(AMED),自治体,データセンターなど多くの皆様方のお力添えで遂行することができた。こうした皆様方の熱い思いに応えるためにも,参加された方々を長期にわたって追跡し,正確なデータを蓄積して行く必要がある。そして,こうして得られたデータは,最終的に世界に向けて発信する責務があると考えている。 ここでは,このRCT がどのようにして実現できたかについて,その背景を概説する。この章に引き続き詳細な記述がなされる各領域でのコンセプト,苦労話をご理解いただくために全体像を確認していただき,今後,同様の研究がなされる際の参考にしていただければ幸いである。
  • 辻 一郎
    2016 年 25 巻 2 号 p. 104-106
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
    J-START は,厚生労働科学研究費補助金「戦略研究」により行われた。戦略研究は,厚生労働省が具体的な政策目標やアウトカムを明確に定めたうえで,研究目標と研究計画の骨子を作成して,その通りに実施する研究者を公募するものである。戦略研究運営委員会(委員長=黒川清・日本学術会議元会長)は,これを通じて大規模なランダム化比較試験(RCT)を日本に根付かせることを目標とした。 私は当時,戦略研究運営委員会のメンバーを務めており,その立場から乳癌検診のRCT であるJ-START が戦略研究として選ばれるまでの経偉,プロトコール作成の過程を振り返るものである。 J-START は,7万人超という規模に加えて97.5%という高い追跡率という点でも,日本では前人未到の実績を残した。その意味で,J-START は今後の日本の臨床研究のスタンダードを作り上げたものと確信している。
  • 鈴木 昭彦, 石田 孝宣, 成川 洋子, 鄭 迎芳, 大内 憲明
    2016 年 25 巻 2 号 p. 107-109
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
    わが国初の乳がん検診分野での大規模な無作為化比較試験(randomized controlled trial:RCT)であるJ-START を運営する組織を構築するにあたり,倫理的に妥当性が担保できる研究デザインと,科学的に公平なデータ収集と評価のできる組織作りが重要であった。倫理審査においては,検診を行う検診実施機関が個々に倫理審査を受けることは非現実的なため,全国一括での倫理委員会の承認を取得する方法で研究を行った。 RCT の信頼性を担保できる研究組織を構築するために,J-START では研究を統括する研究班事務局と付随する各種委員会,事務局とは独立した中央データセンター,そして全国23都道府県の42検診実施施設という組織構成で研究を行った。 大規模に参加を募集するJ-START のような臨床研究では多くのCRC の協力が不可欠である。研究の意義や手続きを正しく理解したうえでのインフォームドコンセントを可能にできたのは,検診実施施設からの人材提供と,日本対がん協会や中央データセンターからの人材派遣,教育による成果であり,今後わが国で同様の臨床試験が行われる際のベンチマークとなるシステムができたと考えている。
  • 成川 洋子, 鄭 迎芳, 鈴木 昭彦, 石田 孝宣, 大内 憲明
    2016 年 25 巻 2 号 p. 110-111
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
    本研究は日本全国42都道府県の検診実施機関の参加協力のもとに実施される,多施設共同ランダム化比較試験である。本演題では,検診実施主体および検診実施施設,精密検査実施機関などの関連施設とどのように連携しているか,また研究の担い手となる一般の参加者とどのようにコンタクトをとり,長期追跡体制を維持しているかを報告する。 乳がん検診の会場で参加者をリクルートし,2年後の検診へのinvitation をするためには自治体や健保などの実施主体,および検診実施施設の理解と協力は必須である。研究班事務局として,実施施設へのヒアリングおよび必要に応じて実施主体の担当者訪問を行い,協力体制を構築した。しかしながら,転居や転職により2年後に同様の検査を同じ検診施設で受けられない参加者も少なからずいた。そのため,検診施設での検査の代用としてのアンケート調査を実施し,郵送だけでなく電話での聞き取り調査を行った。また,自治体と事前の協定を結んでいない中でいかにして住民票調査を実施しているかを報告する。
  • 東野 英利子
    2016 年 25 巻 2 号 p. 112-113
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
  • 2016 年 25 巻 2 号 p. 114-116
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
第25回学術総会/シンポジウム1
40歳代に対する乳がん検診――J-STARTの結果を踏まえて
  • 2016 年 25 巻 2 号 p. 117
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
  • 大内 憲明
    2016 年 25 巻 2 号 p. 118-121
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
    マンモグラフィ検診の有効性については多くのRCT で検証が続けられている。日本でもMiyagi Trial から20年以上経過し,地域がん登録と照合した結果,50歳以上で感度・特異度も高く死亡率減少効果もあるが,40歳代で精度は低下する。そこで,40歳代を対象にがん対策のための戦略研究(J-START)「超音波検査による乳がん検診の有効性を検証する比較試験」が2006年度から開始された。 40歳代乳がん検診法として,マンモグラフィに超音波を併用する群と併用しない群間でRCT を行い,検診精度と有効性を検証する。プライマリエンドポイントを感度・特異度および発見率とし,セカンダリエンドポイントを累積進行乳がん罹患率とした。平成19年度から開始し,平成22年度末までに76,196名が登録された。7万人以上のRCT は世界最大規模で,わが国のがん対策として画期的である。 一方,超音波検診をPopulation-based で,Average risk に行うには精度管理,不利益等,さまざまな課題が浮かび上がってくる。J-START の最新データ,プライマリエンドポイントを示し,40歳代超音波検診の意義を考える。
  • 白岩 美咲, 遠藤 登喜子
    2016 年 25 巻 2 号 p. 122-127
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
    マンモグラフィ(MG)は,乳がん検診において死亡率減少効果がある有用なmodality であるが,40歳代については,乳がん発見の感度が50歳以上の年代と比較すると低いこと,偽陽性率が高いことも知られている。この一因に,40歳代の乳腺濃度が高いことがあり,対策として超音波検診の導入とともにデジタルMG(DMG)の活用が考えられる。DMG は,米国のtrial で,50歳以下の女性,不均一高濃度・高濃度乳房で精度が高いことが報告されている。日本でも近年,MG のデジタル化とモニタ診断が急速に進んでおり,2015年の日本乳がん検診精度管理中央機構MG 指導者研修会のアンケートでは,DMG が95%,モニタ診断経験が79%であった。一方,モニタ診断経験者の画素サイズ認識率は75%であり,また全国のMG 読影認定医のDMG ソフトコピー診断講習会受講率は13%であった。米国では,DMG 読影医にはDMG の講習受講が必須とされているが,日本ではその規定はない。読影医個人の検診精度管理指標もなく,読影医がDMG の特徴を理解して,その利点を引き出す読影ができているか,知るすべはない。40歳代のMG 検診に対する日米の動向の紹介とともにDMG・モニタ診断を活用した精度の高いMG 読影のために,いま何が必要なのか,具体的な読影の方法やDMG の新技術であるDigital breast tomosynthesis の話題を含めて,検討したいと思う。
  • 併用検診における超音波検査法
    桜井 正児
    2016 年 25 巻 2 号 p. 128-133
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
    超音波検査は,マンモグラフィでは腫瘤の検出が難しい40歳代の高濃度乳房の女性の腫瘤検出が可能である。併用検診では隈なく効率よく検査を行い,腫瘤性病変を見落とさないようにすることが大切である。特にマンモグラフィで撮影範囲外になる可能性のある乳房上部と内側は注意深い観察が必要である。基本的には,マンモグラフィ併用検診においても超音波単独検診と同様に両側乳房を隈なく走査し,必要な病変を拾い上げ,病変ではないものを拾い上げない検査の精度が必要である。装置の設定も過度な画像処理はさけ,嚢胞は内部無エコーで後方エコーの増強と外側陰影を認めるような設定にしておくことが必要だと思う。マンモグラフィと超音波検査の総合判定を行うのであれば,マンモグラフィ上の病変に対する部位を推定し,腫瘤の有無を検索し,嚢胞や線維腺腫など質的診断を行うことが必要となる。また今後,超音波検診の全国展開が予想される中,検診における装置の精度管理は大切である。現在一スキャンで撮像できる精度管理ファントムが完成し,日常の画像劣化の精度管理を行っているので紹介したい。
  • 坂 佳奈子
    2016 年 25 巻 2 号 p. 134-138
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
    J-START の結果も公表され,今後のマンモグラフィ・乳房超音波併用検診に関する期待が高まっている。今回のJ-START ではRCT という性質上,独立判定方式で実施された。独立判定方式というのは,マンモグラフィか乳房超音波のどちらかの方法で「要精査」であれば「要精査」とする方法である。この方法であると当然のことながら,要精検率が上昇し,不要な精密検査が増加し,特異度が上昇する。そこで今後,マンモグラフィと超音波の併用検診を取り入れる場合には,マンモグラフィと超音波の両者の結果を総合的に判定して「要精査」とするか,「精査不要」とするかを決定する「総合判定方式」の導入が必須になると考える。今回は総合判定の判定方法を症例呈示しながら解説し,その問題点について言及する。 一番重要なことは,総合判定は日本のマンモグラフィおよび乳房超音波ガイドラインのカテゴリー判定を基に決定されており,両方のガイドラインの内容を十分に理解することである。また,判定を行う医師は,両者の判定に精通することはもとより,乳腺診療に関する十分な経験が必要だと思われる。したがって,超音波併用検診が導入される際には,今までよりいっそう乳腺診療に特化した医師の乳がん検診への協力が必要であり,今はその人財育成が最優先課題だと考える。
  • 装置・施設の認定,従事者の教育・認定
    遠藤 登喜子, 岩瀬 拓士, 東野 英利子, 角田 博子, 横江 隆夫, 堀田 勝平
    2016 年 25 巻 2 号 p. 139-144
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
    乳がん検診の精度を保つには,装置・画像・検査者・判定者・運営システムのすべての精度管理が重要である。NPO 法人日本乳がん検診精度管理中央機構(以下,精中機構)は装置・画像と従事者の精度管理を担当しており,それらの現状について報告した。マンモグラフィ(MG)の読影および撮影技術者の教育は効果の証明された講習会方式によっており,5年毎の更新制度も導入されている。現在,医師・技師ともに1万8千人以上が受講しており,非更新者を除外した有資格者は読影部門10,939名,技術部門14,284名である。また,MG のデジタル化,モニタ診断化の変化に対応してデジタル講習会を構築した。一方,超音波部門では,日本乳腺甲状腺超音波医学会から引き継いだ講習会を精中機構の体制に再構築したばかりであり,今までの受講者は技術部門3,122名,医師部門2,234名である。今後,国内数カ所での同時開催が可能となるよう,システムを改変している。施設画像評価は,MG は2001年からアナログシステムを対象に開始され,3年毎の更新制度となっている。2004年4月からはデジタルマンモグラフィのハードコピーが,2012年4月からはソフトコピーによる評価が開始されたが,ソフトコピーによる評価が増加している。最近3年間の評価数は1,648台で,全国の撮影装置の約1/3に相当する。一方,超音波部門の装置および画質に関する基準作成活動は開始されたばかりであり,今後,精力的に活動を進める予定である。
  • 2016 年 25 巻 2 号 p. 145-147
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
第25回学術総会/ワークショップ3
総合判定の開始に向けてソフト面・ハード面何をすべきか?
  • 2016 年 25 巻 2 号 p. 148
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
  • 坂 佳奈子
    2016 年 25 巻 2 号 p. 149-152
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
    J-START の結果も公表され,今後,マンモグラフィ(MG)・乳房超音波(US)併用検診の開始に期待が高まっている。併用検診を開始するにあたって,一番重要なことは「総合判定」を実施することである。総合判定とはMG とUS の結果を総合的に判定して,「要精査」とするのか,「精査不要」とするのかを決定する方法である。 総合判定の実施方法として「同時併用方式」と「分離併用方式」がある。MG を参照しながらUSを実施する「同時併用方式」の方が腫瘤などの確認ができるので精度は上がる。その受診者が高濃度乳房(dense breast)であるかどうかの確認もできる。しかしながら,人的な問題,施設・出張の環境などの問題で同時併用はできないこともある。「分離併用方式(MG を参照せずにUS を実施する方法)」であっても総合判定をする価値はあるので,実現可能な方法で導入してほしい。また同じ施設で両者を実施,判定する「一施設方式」と違う施設で実施,判定する「二施設方式」がある。各地方の特性により方法はさまざまであると思われるが,それも現行の方式に従い,導入しやすい方法で実施することが重要である。一番の障害になると思われるのが,報告書である。報告書が紙である場合には総合判定の用紙を追加する,あるいは総合判定の欄を追加するという簡単な作業で実施できるが,コンピュータを用いたレポーティングシステムの変更は予算も必要となり,難しい側面もある。しかしながら,その改良により円滑な検診実施が可能になるので,是非取り組んでいただきたい。われわれの施設のレポーティングシステムを紹介し,今後導入される施設の参考にしていただきたい。
  • 向井 理枝, 鈴木 咲子, 鵜澤 郁子, 剱 さおり, 塚本 徳子, 小山 智美, 森下 恵美子, 角田 博子
    2016 年 25 巻 2 号 p. 153-159
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
    当施設では人間ドックのオプションとして,MG とUS の同時併用検診を行い総合判定している。当施設の現状をUS 技師の立場から紹介し,検査の運用方法やUS 技師がMG を参照するポイントについて,症例を交えて提示する。同時併用において,US 技師はモダリティ毎の特性を理解しておかなければならない。MG のブラインドエリアを認識し,所見や部位を判断するおおよその知識は必要である。MG 所見をUS 技師が認識して検査を実施したか否かは読影医に有用な情報となる。USで所見がなくとも対応部位を撮影するなど,US の撮像やレポートの記載にも工夫が必要である。当施設のUS 技師を対象に同時併用検診に関するアンケートを実施した結果では,病変の検出率が上がるという利点があがったが,一方でMG 所見を誤認することで検査に余計な時間を要することなどが欠点としてあがった。MG の参照については今後の課題と考えられた。効率的な併用検診を行うための一番の理想は,MG 画像とその読影された結果を参照できることであるが,そのような環境は非常に限られる。しかし最低限,技師・読影医間の情報伝達は重要であり,US 技師,MG 技師,読影医でコミュニケーションがとれる環境が非常に大切であると考えている。
  • 相馬 明美, 大貫 幸二, 宇佐美 伸, 三浦 由美, 佐々木 教子, 関村 典子, 剱吉 真弓, 浦波 美和子, 熊谷 由紀, 本田 久美 ...
    2016 年 25 巻 2 号 p. 160-162
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
    当施設のマンモグラフィ(MG)・超音波(US)併用乳癌検診は,MG を参照してUS を施行する同時併用総合判定を行っている。出張検診ではMG サーバーとノートパソコンをLAN ケーブルで接続しMG 画像を確認,US 技師はMG 画像で乳房の構成を評価し,左右差を比較し高濃度部分をチェックする。US は全乳房を走査,全走査を全例動画で記録し,US 所見の有無を記録用紙に記載している。読影はMG 一次読影1名,MG 二次読影と総合判定を1名の医師で行っている。MG を先に読影しMMG 単独のカテゴリーを付けた後に,US 画像を判定し最終的に総合判定を行っており,読影には一症例あたり約1.5分を要している。MG 所見とUS 所見に乖離がある症例は,動画を確認してから判定を行っている。平成24年4月から平成27年2月までに総合判定を行った956名の要精検率は,独立判定を行った場合5.3%であったが,総合判定では2.7%に低下した。12例に動画確認が必要であったが,その理由は,MG 画像でFAD や腫瘤の所見をUS 技師がチェックしていないか正常乳腺と判断した症例であった。これらの改善にはMG の判読力の向上が必須であり,さらにUS 手技と知識の向上が必要と感じた。
  • 伊藤 吾子, 倉持 正志, 助川 良子, 奥山 寿恵, 渡邊 希, 新嶋 綾, 大木 洋美, 松浦 恵美子, 川崎 朋美, 佐藤 裕子
    2016 年 25 巻 2 号 p. 163-167
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
    併用検診はマンモグラフィ(MMG)を参照し,超音波検査(US)を行う同時併用・総合判定が理想であるが,モニタ新設や読影トレーニング等の準備が必要である。当施設では任意型検診として2004年よりMMG,US 併用検診を行っているが,同時併用の実施が困難であり,2006年より分離併用・総合判定としている。その実際について報告する。 同時併用実施困難な理由;MMG とUS を行う建物が異なり,MMG モニタ,LAN 新設に費用がかかる。効率的に行うためUS→MMG の順となる受診者もいる。検診の実際;MMG は病院にて撮影,US は健診センターにてMMG を参照せずに技師が行う。有所見の場合はカラードプラ,エラストグラフィを追加し,レポートを作成する。後に第一読影医がMMG を読影,その後,第二読影医がMMGとUS を同時に読影し,総合判定を行う。MMG,US ともモニタ診断で過去画像を参照できる。総合判定の基準は総合判定ガイドラインに従い,「FAD,腫瘤はUS 所見を,石灰化,構築の乱れはMMGを重視する」としている。検診成績;2006年~2014年延べ受診者は32,831名,発見癌数は114例,要精査率は2.38%,癌発見率は0.35%,PPV は14.6%であった。 結語;分離併用・総合判定は,総合判定を行う医師がUS とMMG を同時に読影でき,医師と技師の間に信頼関係が築けていれば,新たな装置を設置することなく実現可能である。
  • 2016 年 25 巻 2 号 p. 168-170
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
原著
  • 浅野 好美, 長尾 育子, 河合 雅彦, 國枝 克行
    2016 年 25 巻 2 号 p. 171-175
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
    マンモグラフィ検診等で発見される微小石灰化を伴った乳腺の変化は多彩であり,精査をどこまで行うか迷う場合がある。今回われわれは,当院でステレオガイド下マンモトーム生検の適応となり診断されている石灰化病変について,今後の検査の適応を考える目的で,画像所見と病理所見について検討し,若干の文献的考案を加えて報告する。対象は2008年1月から2013年12月までに当院でステレオガイド下マンモトーム生検を実施した94例,全例女性でそのうち乳癌は43例(44.7%)で,癌症例のうちDCIS は37例(86.0%)であった。MMG 上,石灰化形態は微小円形37例,淡く不明瞭44例,多形性13例,各々癌の割合は45.9%,34.0%,92.3%であり,微小円形・淡く不明瞭な石灰化症例のうち過半数が良性であった。ステレオガイド下マンモトーム生検は早期癌の発見には有用であるが,その適応を判断するにはマンモグラフィの石灰化を過剰診断しないことが重要である。カテゴリー3においては石灰化の濃度が非常に淡い症例は有意に癌症例が少なかった。またカテゴリー3症例の背景濃度の検討では検査適応となった症例は有意に高濃度・不均一高濃度であった。以上から石灰化が非常に淡い場合は経過観察を検討する。また乳腺濃度が高濃度あるいは不均一高濃度の場合には石灰化の付随所見が読み取りにくいことを念頭に置き,過剰診断せぬよう注意することでステレオガイド下マンモトーム生検の適応がさらに絞り込める可能性が示唆された。
  • 吉岡 泰彦
    2016 年 25 巻 2 号 p. 176-182
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
    緒言;当院は2t トラックを改造し,世界最小・世界初の充電式マンモグラフィ検診車を開発した。大型バスを改造した従来の検診車と異なり,当検診車は走行道路の制限がなく,普通の駐車スペース1台分で運用できる。当院は,この検診車で週に1回,1~2時間ずつ診療所を訪問し,分離併用A 方式乳がん検診のマンモグラフィ撮影を請負う「かかりつけ医巡回マンモグラフィ撮影」を行っている。その効果を推定するため,当院で当検診車を導入し,分離併用B 方式をA 方式へ変更した時期を検討した。なおこの時期は実証運用のため,巡回撮影と同様に,限定した診療時間にマンモグラフィ撮影を行った。 対象・方法;当院の住民基本健診受診者かつ乳がん検診対象者を対象とした。そのうち乳がん検診参加者の割合を,検診車導入前の分離併用B 方式の平成19年5~10月(導入前,n=58)と,当検診車実証運用中の分離併用A 方式の平成20年5~10月(導入後,n=57)で比較した。Fisher の直接確率検定法を用い,P <0.05を有意差とした。 結果;導入前/導入後の参加率は48.3%/68.4%で,導入後が有意に高かった。非高齢者群(65歳未満)では64.9%/78.2%で,有意差はなかった。高齢者群(65歳以上)では19.0%/61.8%で,導入後が有意に高かった。 考察;高齢者群では,通い慣れた診療所で検診が完結するA 方式であることが参加率上昇の要因と考えられた。当小型検診車によるA 方式は受診率向上の有力な手段となりうる。
症例報告
  • 小林 哲郎, 田川 由樹, 大西 純子, 花田 正人
    2016 年 25 巻 2 号 p. 183-187
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
    検診では臨床症状がなくマンモグラムの異常を呈する例が多く,その異常の大半は微小石灰化病変である。急速に進展した微小石灰化を伴うDCIS(ductal carcinoma in situ)症例を紹介する。 55歳,女性。1年前の検診マンモグラフィでも少数の微小石灰化を認め,要精査と判定されていたが,精密検査を受けていなかった。今回,検診マンモグラフィで右乳房C 領域に多形性石灰化の区域性分布を指摘され,当科を受診した。超音波でも同部に点状高エコーを含む広範囲な低エコー域を認めた。針生検でductal carcinoma と診断された。マンモグラフィで乳頭内にも微小石灰化が確認されたため,乳房切除を実施。センチネルリンパ節生検は陰性であった。病理結果は,high grade DCIS(comedo type),ER(-),PgR(-),HER2(3+),Ki―67>30%,核異型度3であった。乳房形成術が予定されている。マンモグラフィの微小石灰化,さらにその急速な進展について考察を加えた。
  • 米沢 圭, 江河 勇樹, 森木 利昭
    2016 年 25 巻 2 号 p. 188-192
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,女性。肝嚢胞性疾患の精査目的に施行されたFDG―PET/CT にて両側乳房に30mm 超の高集積(SUVmax:4.9,5.0)を認め,両者とも胸筋への浸潤を伴う乳癌が疑われため精査目的に当科紹介となった。20歳頃に豊胸目的での注射の既往が確認されたため,異物性肉芽腫の鑑別が必要となった。乳腺造影MRI 検査を追加した。両乳腺腫瘤とも脂肪抑制T2強調像で軽度の高信号を示し,造影はslow―persist 型で,拡散強調画像では低信号であった。良性疾患の可能性が示唆された。針生検(CNB)の病理診断では,左右とも線維性脂肪組織を認め,脂肪細胞様の細胞はCD68陽性でS100蛋白陰性で組織球やマクロファージであり,脂質を含む異物に対する異物肉芽腫(lipogranuloma)と考えられた。シリコン注入による肉芽腫が疑われた。定期的な外来診察では形態の変化を認めていない。シリコン肉芽腫の診断には豊胸術の既往歴を問診することが重要で,画像診断としては乳腺後隙や胸筋に腫瘤が存在することが鑑別診断の一助となると考えられた。 シリコン注入による豊胸術後のFDG―PET 偽陽性の報告例は少数である。同肉芽腫に乳癌が混在している場合の診断は困難であると思われた。造影MRI による評価が有用と思われるが,確定診断にはCNB 等の病理診断が必須であると考えられた。
feedback
Top