日本乳癌検診学会誌
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第27回学術総会/シンポジウム2
遺伝性乳癌卵巣癌の取り扱い
卵巣癌を中心に
青木 大輔
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2018 年 27 巻 1 号 p. 29-33

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抄録

遺伝性乳癌卵巣癌(hereditary breast and ovarian cancer: HBOC)は,BRCA1 またはBRCA2 遺伝子(BRCA)の生殖細胞系列変異が原因の常染色体優性遺伝形式をとる遺伝性腫瘍のひとつである。未発症者の場合,リスク低減卵管卵巣摘出術(risk-reducing salpingo-oophorectomy: RRSO)が最も効果が高い卵巣癌予防法として推奨され,卵巣癌のリスク低減効果のみならず卵巣癌や乳癌による死亡を低減し,さらに全死亡も低下すると報告されている。RRSO を希望しない場合はサーベイランスが行われることになるが,現時点では有効なスクリーニング法が確立しているとは言い難い。 一方,上皮性卵巣癌のおおよそ10~15%程度にBRCA 変異が認められる。BRCA 変異陽性の再発卵巣癌に維持療法としての高い効果が示されたpoly-adenosine diphosphate-ribose polymerase(PARP)阻害薬の使用に際してはBRCA の病的変異の検出が薬剤選択の際の有用な情報としての意義を有することになる。BRCA 遺伝学的検査の際には,特に未発症者に対しては遺伝カウンセリング等の配慮が必要だが,卵巣癌の治療という観点からもBRCA をはじめとした遺伝学的検査の重要性がますます高くなると考えられる。

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