日本乳癌検診学会誌
Online ISSN : 1882-6873
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原著
乳腺量測定ソフトの特徴と「みかけ高濃度」群,「相対的低濃度」群における測定値補正の試み
甲斐 敏弘 二宮 淳齊藤 毅中野 聡子矢形 寛
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2021 年 30 巻 1 号 p. 87-95

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抄録

乳腺量測定ソフトはマンモグラフィ画像の解析結果と撮影条件を用いて画素ごとに乳腺量を測定するもので,「乳腺領域の乳腺量比率(以下,FG%)」測定機能を実現したものである。特に FG%はわが国の乳房構成判定において利用価値の高い画期的な測定値である。我々は右 MLO 画像433例を用い乳房構成判定閾値の試案を設定したが,一部の画像で FG%と目視判定との間で乖離があり,その原因として圧迫乳房厚(以下,CBT)と皮下脂肪量が深く関与していることを明らかにした。CBT と FG%は逆相関関係にあり CBTの小さい薄い乳腺では脂肪量も少なく FG%は目視印象より高い値として計測され CBT30mm 未満を「みかけ高濃度」群とした。反対に皮下脂肪量が多くその影響を無視できない群があり,乳房内脂肪量の検討で CBT 46mm 以上を目視印象より FG%が低めに計測される「相対的低濃度」群とした。この群のなかでも乳房内乳腺外脂肪量(以下,ExFat)200cm3以上の群はさらに極端に皮下脂肪量が多い症例と考えられた。これら CBT 30mm未満の「みかけ高濃度」群と,CBT46mm 以上の「相対的低濃度」群のうち ExFat200cm3以上の群についてそれぞれ FG%の測定値補正を行ったところ,著者目視判定との κ 係数は「適度に一致」から「かなり一致」へと上昇した。この試みにより FG%はより目視判定と違和感のない判定手段として利用価値が増すものと思われる。

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