抄録
[背景・目的]ブレスト・アウェアネスは乳癌の早期発見につながる効率的かつ効果的な乳房の健康行動であるが,未だ広く国民に知れわたっていない生活習慣であり,積極的な啓発運動が求められている。われわれは YouTube を活用して,動画での乳癌情報提供の仕組みを確立しており,ブレスト・アウェアネスに関する動画を発信している。今回,どのようなブレスト・アウェアネスの情報がより多くの方々に届けられるかを明らかにするために,われわれのブレスト・アウェアネス関連動画を比較検討した。[方法]ブレスト・アウェアネスの啓発のために,複数の乳腺科医による十分な議論,ピアレビュー,非医療者の視聴を経て,科学的妥当性,表現や内容の理解しやすさに配慮して動画を6本作成し,YouTube チャンネル『乳がん大事典【BC Tube 編集部】』に投稿した。2020年7月から2021年6月までのこれらの動画の視聴回数・維持率を比較検討した。[結果]対象期間の全6動画の視聴回数は計7.7万回であった。そのなかで最も視聴回数が多かったのは「乳癌症状のまとめ短編」で2.9万回再生,視聴維持率も他の動画よりも高く,47.2%であった。「ブレスト・アウェアネス」を解説した動画の視聴回数は0.5万回,視聴維持率37.2%であった。[結語]「ブレスト・アウェアネス」を解説した動画よりも,症状について,さらに簡潔にまとめた動画のほうがより視聴されていた。ブレスト・アウェアネスが「自分の乳房の意識化するプロセス」を指すとおり,視聴者が「自分事と捉える」「自分の乳房を意識できる」よう,簡潔かつアクセスしやすいプラットフォームを確立し,行動変容につなげることが肝要である。さらに,社会の風潮に合わせて発信する内容や方法を改良し続ける必要がある。