日本乳癌検診学会誌
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第31回学術総会/ワークショップ2 次世代の乳がん検診
数理モデルから見えてくる乳がん検診の真実
―数理モデル×乳がん検診―
梯 正之 松山 亮太恒松 美輪子
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ジャーナル 認証あり

2022 年 31 巻 2 号 p. 119-130

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抄録

乳がん検診の効果を定量的に明らかにするため,日本の乳がんに関する状況からパラメターを推定した数理モデルによるシミュレーションにより寿命の延長について分析した。この数理モデルは,各年齢に応じた一般的な死亡率に加えて,乳がんの罹患率や死亡率により,生まれてから毎年人数が変化していく形のものである。乳がんについては,ステージ毎の異なった死亡率とステージの進行する率を臨床データより推定して使用した。がん検診については,実施間隔や対象年齢の異なるいくつかの場合について,平均寿命がどれだけ延びるかを計算した。 シミュレーションの結果から,隔年実施で40~79歳を対象者とした乳がん検診により,93.6日(約3か月)の寿命の延長が期待できると推定された。40歳で乳がんに罹患した者に限ってみると5.78年余命が延長するという結果が得られた。一方,30年の検診期間中,1人が1回以上(約1.3回)の偽陽性を経験していた。近年,検診における過剰診断や有害事象などへの関心も高まっており,これらとのバランスをとって比較・評価を行う必要がある。そのため,個人差も考慮した総合的な判断基準を提案した。

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