日本乳癌検診学会誌
Online ISSN : 1882-6873
Print ISSN : 0918-0729
ISSN-L : 0918-0729
31 巻, 2 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
第31回学術総会/ワークショップ2 次世代の乳がん検診
  • ―数理モデル×乳がん検診―
    梯 正之, 松山 亮太, 恒松 美輪子
    2022 年 31 巻 2 号 p. 119-130
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/07
    ジャーナル 認証あり
    乳がん検診の効果を定量的に明らかにするため,日本の乳がんに関する状況からパラメターを推定した数理モデルによるシミュレーションにより寿命の延長について分析した。この数理モデルは,各年齢に応じた一般的な死亡率に加えて,乳がんの罹患率や死亡率により,生まれてから毎年人数が変化していく形のものである。乳がんについては,ステージ毎の異なった死亡率とステージの進行する率を臨床データより推定して使用した。がん検診については,実施間隔や対象年齢の異なるいくつかの場合について,平均寿命がどれだけ延びるかを計算した。 シミュレーションの結果から,隔年実施で40~79歳を対象者とした乳がん検診により,93.6日(約3か月)の寿命の延長が期待できると推定された。40歳で乳がんに罹患した者に限ってみると5.78年余命が延長するという結果が得られた。一方,30年の検診期間中,1人が1回以上(約1.3回)の偽陽性を経験していた。近年,検診における過剰診断や有害事象などへの関心も高まっており,これらとのバランスをとって比較・評価を行う必要がある。そのため,個人差も考慮した総合的な判断基準を提案した。
  • ― ナノバイオテクノロジー×乳がん検診―
    竹内 俊文
    2022 年 31 巻 2 号 p. 131-135
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/07
    ジャーナル 認証あり
    最近,われわれは,標的分子の鋳型をとることで,標的分子を認識・捕捉する能力を人工材料に付与する「分子インプリンティング技術」を応用し,形成された分子認識空間内にさらに化学修飾を施して高機能化するポストインプリンティング修飾技術(PIM)を開発した。この技術を細胞外小胞エクソソーム(sEVs)検出に応用し,sEVs を捕捉する空間をセンサ基板上に形成後,PIM によりその空間内のみに,sEVs 表面の膜タンパク質を認識する抗体と,sEVs の結合情報を蛍光変化で可視化する蛍光レポーター分子を導入したsEVs センシングチップを創製した。採取する体液としては,低侵襲で採取可能な上に,他の体液に比べ夾雑物質が少ないが,成分が希薄でこれまでほとんど用いられなかった「涙液」を用いた。異なる抗体を導入した複数のsEVs センシングチップを用いて,乳がん患者の涙液中sEVs を測定したところ,各抗体に対する蛍光応答パターンが健常人とは異なることが分かった。また,ステージI の乳がん患者の全摘手術の術前と術後の涙液中sEVs の蛍光応答パターンが明らかに異なり,術後のパターンは健常人のパターンに近づくことが認められた。with コロナの時代,低侵襲で容易に採取可能な涙液による世界初のがん検出は各方面で興味を引くと思われる。
  • ―公衆衛生倫理×乳がん検診―
    恋水 諄源
    2022 年 31 巻 2 号 p. 137-141
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/07
    ジャーナル 認証あり
    人間は何らかの選択を行う際,自分では情報に基づいた合理的な判断しているつもりであっても,様々なバイアスや考え方の特性によって非合理的な選択をしてしまうことがある。こうした人間の行動経済学的特性を理解し,本人にとって最適な選択を自発的に行えるよう促すためのデザインや仕組みを「ナッジ」と呼ぶ。近年,公衆衛生分野でナッジの利用が進んでいる。ナッジを利用したがん検診受診勧奨資材も作成され,乳がん検診でもこれを活用することで検診受診率の上昇が見られたという効果検証が行われている。 ナッジの基礎にある倫理的・政治哲学的理論はリバタリアン・パターナリズムと呼ばれ,目的に対する手段を適切にガイドすることで,完全な自由放任よりも高いレベルで本人の価値観を尊重できると考えられている。しかし,そうした原理的な妥当性を考慮しても,ナッジが倫理的に疑問視される例はあり得る。非教育的ナッジが用いられる場合,ナッジが促す方向性がそもそも本人に適さない場合などである。ナッジを設計する場合にはこうした倫理的問題も考慮に入れた上で,制度設計に市民を巻き込み,検診制度に一般市民の価値観を反映させつつ,情報を周知する仕組みを構築していくことが望ましい。
  • ―インターネットツール×乳がん検診―
    甲斐 敏弘, 菅又 徳孝, 柴田 裕史, 尾本 きよか, 齊藤 毅
    2022 年 31 巻 2 号 p. 143-148
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/07
    ジャーナル 認証あり
    【背景と課題】大宮医師会ではさいたま市の対策型乳がん検診として36施設(うちMG 撮影13施設),読影医19名で実施している。読影医の所属や経歴はさまざまで,半数は専門外で高齢化も予測される。我々は精度管理のために画像カンファレンスの定期的開催とデータベース整備が重要だと考えインターネットツールを利用している。【インターネットツール】関係者間の連絡にはMessenger,資料の参照編集のためにDropbox 共有フォルダ,動画保存のためにYouTube,会議のためZOOM を利用している。またパワーポイントではビデオブックも作成可能である。【画像カンファレンス】ZOOM ミーティングで開催し,パワーポントの拡大機能やZOOM の注釈機能,投票機能等を利用しポイントを絞った検討が可能となった。【画像データベース】クラウド型ビジネスツールScrapbox を利用し,ネットワーク型データベースを作成した,超音波動画も掲載が容易である。 現在,症例ベースのOBIF(Omiya Medical Association Breast Imaging Forum)と,MG 更新試験を意識したMGDB(MG Data base)を作成している。【考察】対策型個別検診においては,所属施設もキャリアパスも全く異なる医師,技師によって運営されるため,情報共有の手段としてこれらを利用することでレベル維持の一助としたい。
  • ―学校教育×乳がん検診―
    高木 富美子, 栗橋 登志, 小泉 美都枝, 大多和 まや, 福田 護
    2022 年 31 巻 2 号 p. 149-152
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/07
    ジャーナル 認証あり
    第3期がん対策推進基本計画でがん教育は,がん予防,がん医療の充実,がんとの共生を支える基盤と位置付けられ,学校におけるがん教育に外部講師を活用した授業が推進されるようなった。当会では2018年に「ピンクリボンアドバイザーによるがん教育プロジェクト」を立ち上げ,活動を推進している。ここまでで実施した授業は2021年6月現在で14校,1988名への授業を行った。 文部科学省による『外部講師を活用したがん教育ガイドライン』では,目標を1.がんについて正しい理解,2.健康と命の大切さについて主体的に考えること,と定めている2)。本プロジェクトではこれに「未来の検診受診率アップ」「保護者世代へがん検診受診率アップ」を加えた授業展開案を学校に提示している。また認定講師98%が乳がん経験者であることから,自らの体験として乳がん検診について語っている。 授業後のアンケートでは『将来がん検診を受けようと思うか』の問いに,93.5%が「ぜひ受けようと思う」または「なるべく受けようと思う」と回答している。『身近な人にがん検診を進めようと思うか』には91.6%が「ぜひ勧めようと思う」または「なるべく勧めようと思う」と回答している。がん教育を行うことにより,がん検診に関する意識の向上や行動変容が起きると考えられる。そして,同様に乳がん検診にも起きると考える。今後さらに一過性の関わりでなく,継続的な関係を築き,啓発活動への参画を促したい。
  • ―自動化×乳がん検診―
    井上 謙一, 川崎 あいか, 有泉 千草, 海野 敬子, 北田 翼, 長島 美貴, 水野 香世, 三角 みその, 佐々木 毅, 土井 卓子
    2022 年 31 巻 2 号 p. 153-156
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/07
    ジャーナル 認証あり
    対策型乳癌検診では現在マンモグラフィ検診を採用している。一方,マンモグラフィに超音波検査を加えると癌検出力が向上することが知られている。しかしハンドヘルドエコーでの検診は人的資源が不足しており現実的ではない。また検診の場においては感染リスクも増加する。そこで全自動超音波検査で検診を行い,さらにそれを人工知能が自動診断することで,検診の場に応用することが現実的であるかを検証した。リングエコーで撮影した72症例を対象に,人工知能で画像診断させることで乳癌の検出精度を検証した。人工知能は畳み込みニューラルネットワークにトランスフォーマーを組み合わせた,リングエコー専用のアルゴリズムを構築した。症例毎の精度は正診率78.6%,感度85.7%,特異度71.4%となり,検診に応用し得る可能性が示唆された。今後は症例数を増やすことで精度を改善させ,新たな検診システムとして全国展開させることができると思われた。また撮影から診断まで自動化された検診システムが構築されることで,感染対策はもとより,へき地や離島といった医療資源に乏しい地域にも利用可能と思われ,地域格差の解消にも繋がると思われた。
第31回学術総会/パネルディスカッション2 HBOC 未発症変異保持者の乳がん検診とサポート体制
  • :欧米の現状について
    戸崎 光宏, 村上 和香奈
    2022 年 31 巻 2 号 p. 157-161
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/07
    ジャーナル 認証あり
    欧米では,ハイリスク女性に対して乳房MRI を用いた検診(スクリーニング・サーベイランス)の重要性が認識されている。国内でも,遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)に関するガイドラインが作成され,乳房MRI を用いた検診の推奨グレードは高い。しかし,HBOC 既発症者に対しては2020年4月に検査・治療・画像フォロー等が保険収載されたが,未発症者は全てが自費診療である。将来の保険収載に向けて,国内のデータ蓄積が早急に必要である。 われわれは,HBOC 未発症者に対する乳房MRI 検診の有用性を検証する前向き試験を行い,MRIを契機に検出された乳がんの頻度は9%(2/22)と,乳房MRI の有用性を報告してきた。しかし,更なるデータ蓄積が必要であり,それまでは自費診療での乳房MRI 検診が余儀なくされる。 その一つの対策として,NPO 法人乳がん画像診断ネットワークの提供する「ハイリスク女性に対する造影乳房MRI 検診サポート事業」を提示した。将来,未発症者に対して乳房MRI 検診が保険収載されるまでの取り組みであるが,遠隔画像診断の技術を駆使すれば全国に展開することが可能である。また,HBOC 以外のハイリスク女性にも適応拡大することが可能である。今後は,HBOC 未発症者に対する保険収載に向けて,乳房MRI の有用性の更なる検証およびMRI ガイド下生検の普及活動を行う必要がある。
  • 新川 裕美, 金子 景香, 幅野 愛理, 喜多 瑞穂, 藤井 匠子, 春山 優理恵, 前田 哲代, 中島 絵里, 稲荷 均, 上野 貴之, ...
    2022 年 31 巻 2 号 p. 163-170
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/07
    ジャーナル 認証あり
    癌既発症者におけるHBOC 診療の一部は保険収載されたが,癌未発症者においては全て保険未収載のままである。しかし癌の既発症,未発症者に関わらず,HBOC と診断された場合,サーベイランス等の医学介入につながり,癌の一次・二次予防という観点から,その医学的メリットは大きい。本調査では,当院にてBRCA 1/2 遺伝学的検査を受検した癌発症者と,その血縁者への遺伝医療について診療記録を後方視的に分析,遺伝カウンセリング(GC)記録も加え,癌未発症BRCA 1/2病的バリアント保持者への対応に関して課題を抽出し考察を行った。2020年度,当院にて新たにHBOC と診断されたHBOC 関連癌既発症者は89名であり,うち87名がGC に来談した。この87名の家系のうち28名の家系における癌未発症血縁者36名がGC での説明後,遺伝学的検査へと進み,2名(男性3名,女性9名)がHBOC と診断された。女性9名中8名が乳腺外科等でのサーベイランスを開始し,1名は今後の検査について検討中である。癌未発症BRCA 1/2 病的バリアント保持女性の多くは,継続的なサーベイランスやリスク低減手術への,保険未収載ゆえの経済的負担を感じつつも,自身の癌リスクを知り,対策を取ることに対する意義を理解していることがGC 記録から推察された。遺伝医療ではどのような選択も尊重されるべきではあるが,その前提として,癌発症者と未発症者には,同程度の医療制度上のサポートと適切な情報提供が必要であると考える。
  • ~MG/US の位置付けを考える
    竹井 淳子, 喜多 久美子, 角田 博子, 山内 英子
    2022 年 31 巻 2 号 p. 171-176
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/07
    ジャーナル 認証あり
    本邦では2020年4月より,45歳以下の乳がん発症者や,第3度以内近親者の乳がんや卵巣がんの家族歴等の条件付きで,BRCA1/2遺伝学的検査が保険収載された。また,新規薬剤PARP 阻害薬のコンパニオン診断や,がんゲノム医療で2次的にBRCA 遺伝子に病的変異が見つかることもある。遺伝カウンセリングでは,BRCA 変異保有者のサポートに限らず,血縁者に対しても十分な情報提供を行い,遺伝学的検査実施を含めた意思決定支援が重要であり,このような背景をもとに未発症変異保持者も診断されるようになってきた。 2006年8月から2020年2月までに,当院遺伝診療センターに来談した2,359例中,BRCA1/2の病的変異が判明したがん未発症者は45例であった。来談時の平均年齢は39.4歳(21~67歳:平均の中央値38歳)で,性別は女性42例,男性3例であった。BRCA1/2の病的変異の内訳はBRCA1:27例,BRCA2:17例,BRCA1/2 1例であった。当院で医学的管理を行っているのは31例であった。MRI 適応者のうちMRI サーベイランスを行っているのは18例中13例(72.2%)で,MG 適応者では17例中16例(94.1%)であり,US は全例に施行されていた。リスク低減乳房切除術を施行したのは9例(34.6%)で,リスク低減卵管卵巣摘出術を施行したのは12例(66.7%)であった。経過中に乳がんを発症したのは31例中5例で,浸潤がんが4例(腫瘤自覚2例,US 発見1例,MRI 発見1例),DCIS が1例(MG発見)であった。 未発症者は若年が多く,妊娠・出産や仕事などのライフイベントで長期間にわたる継続した管理が難しい場合もある。実臨床の経験を踏まえ,HBOC 未発症変異保持者の乳がん検診とサポート体制やMG とUS の位置付けについて文献的考察と合わせて検討した。
  • 飯尾 智美, 安井 有香, 山口 園美, 中西 湖雪, 浅沼 栄里, 入駒 麻希, 柴田 亜貴子, 安達 博, 吉田 雅行, 武藤 繁貴, ...
    2022 年 31 巻 2 号 p. 177-181
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/07
    ジャーナル 認証あり
    がん検診においても遺伝子情報に基づくリスク診断が注目されている。我々は健常ながん検診受診者を対象として,AI チャットボット問診で高リスク者を効率的に拾い上げ,個別化検診プランを提供するSEIREI―CARE プログラムを2021年4月より開始した。希望者には遺伝カウンセリングを受けて頂き,同意者には多遺伝子パネル検査を実施し,遺伝子変異に基づく医療を提供するプログラムである。2021年4月~9月における婦人科検診受診者総数10,742名のうち,AI 問診実施者は1,117名で10.6%,NCCN ガイドライン合致割合の平均は24.9%,遺伝カウンセリング実施割合の平均は9.1%,遺伝子パネル検査実施者は3名であった。がん未発症者が遺伝性腫瘍やリスクについて考え,理解する契機となるため,SEIREI―CARE プログラムへの登録者を増やすことが重要である。がん未発症者への遺伝子変異に基づく個別化検診を実施していくためには,一般女性に対して理解しやすい情報提供を行うことや,関わる看護職がスキルアップし1人でも多く遺伝カウンセリングに繋ぐことが重要であり,今後の課題と考える。
原著
  • 山田 博文, 藤本 杏子, 深谷 裕子, 矢内 充
    2022 年 31 巻 2 号 p. 183-187
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/07
    ジャーナル 認証あり
    COVID-19ワクチン接種後に乳がん検診で超音波検査を行った女性の腋窩リンパ節腫大について検討した。接種されたワクチンは全例ファイザー製コミナティ筋注であった。ワクチン接種後に超音波で乳房および両側腋窩の検診超音波検査を行った。超音波検査では腋窩のリンパ節の大きさ,皮質の状態,リンパ門内の脂肪組織を反映した高エコー像について検討した。リンパ節腫大の判定には1年前の超音波検査所見と比較した。年代やワクチン接種回数についてリンパ節腫大の認められた人数を検討した。症例は115例,腋窩リンパ節腫大が認められた症例は87例(76%)であった。皮質が厚くなる腫大やリンパ門内の高エコー像が消失するような過大反応性リンパ節腫大は53例(46%)に認められた。1回目の接種後では68例中54例(79%)にリンパ節腫大が認められた。いずれの年でも同様にリンパ節腫大を認めたが,皮質の肥厚やリンパ門内の高エコー像の消失した過大な反応性リンパ節腫大は若年者に多い傾向が認められた。COVID-19ワクチン接種に伴う片側腋窩リンパ節腫大は,乳がん検診の際に多く認められる。乳がん検診の時期とワクチン接種の時期は国内外でガイドラインが出てきているが,今後もワクチン接種が常態化して行くときには判断が困難となることがある。乳がん検診においては,COVID-19ワクチン接種に伴う片側腋窩リンパ節腫大について知識を持って臨むべきである。
  • 藤光 律子, 島倉 樹子, 吉満 研吾
    2022 年 31 巻 2 号 p. 189-194
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/07
    ジャーナル 認証あり
    目的;Digital breast tomosynthesis(以下DBT)で指摘された境界明瞭平滑腫瘤(Well circumscribed mass;以下WCM)の良悪性に関わる画像所見を検討した。対象及び方法;2016年7月から2021年3月までDBT でWCM を認めた555病変,平均年齢55才。撮影機腫は富士フィルムAMULET Innovality でMLO,CC 撮影を行った。最終診断は良性,悪性(がん)に分け,Digital mammography(以下DM)所見,DBT 所見を検討した。 結果;内訳は555病変中悪性は24病変(4.3%),DM 所見C1が41.6%,うち3.5%に悪性を認めた。良悪性の鑑別としてDBT での最長径,最長/最短径比,腫瘤濃度が単変量解析での有意因子,腫瘤濃度のみが多変量解析で独立有意因子であった。腫瘤濃度による,がんの診断能は正診率77.1%,感度45.8%,PPV8.8%。一方,感度を重要視すると,最長径7.9mm 以上を悪性とした場合,感度100%,特異度38.6%,正診率41.3%,PPV6.9%,NPV100%であった。 結語;WCM の約95%は良性病変であり,7.9mm 未満の小病変を除外することで,がんを見落とさずに偽陽性率を低下させることができる可能性が示唆された。
  • ―Full-Field Digital Mammography との比較―
    古谷 悠子, 後藤 由香, 津川 浩一郎, 前里 美和子, 福田 護
    2022 年 31 巻 2 号 p. 195-202
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/07
    ジャーナル 認証あり
    日本人乳房におけるマンモグラフィ(full-field digital mammography: FFDM)と合成二次元マンモグラフィ(synthesized two―dimensional mammography:合成2D)の診断能と画像所見別の特徴を検証するため観察者実験を行なった。 対象は2017年1月から2018年4月に当施設で診療もしくは任意型検診目的にて乳房トモシンセシス(digital breast tomosynthesis: DBT)を施行した受診者より選定した100症例(悪性:43症例,正常あるいは良性:57症例)である。 観察者6名の結果の平均は,感度はFFDM が62.0%,合成2D が72.1%で合成2D が高く,特異度はFFDM が77.8%,合成2D が78.0%でありほぼ同等,診断能の正確さの尺度であるfigure of meri(t FOM)はFFDMが0.637,合成2Dが0.693(p=0.107)であった。画像所見別の感度は構築の乱れのみ有意差を認め,すべての所見でFFDM と合成2D間でカテゴリーの不一致を認めた。 日本人乳房において合成2D はFFDM と比較して同等以上の診断能を示した。DBT 使用時には二重被曝の問題を考慮し,所見によるFFDM と合成2Dの描出の違いを十分に理解した上で,FFDM を省略し合成2Dとの置き換えを検討する必要がある。
  • 吉田 泰子, 角田 博子, 剱 さおり, 鵜澤 郁子, 八木下 和代, 鹿股 直樹
    2022 年 31 巻 2 号 p. 203-210
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/07
    ジャーナル 認証あり
    現在の乳房超音波診断ガイドライン第4版の検診の要精検基準では,乳管内充実性病変はすべて要精検とすることとなっている。しかし,検診の場で遭遇する乳管内病変は乳管内乳頭腫をはじめとする良性病変の頻度が高く,不要な精検を多くしている要因と思われる。そこで,検診で指摘された乳管内病変の結果を後方視的にレビューし,その実情を把握して超音波所見の中で精検不要とできる指標がないかを検討することを目的とした。 2016年1月~2020年12月に当施設で乳管内病変として指摘された334所見を象とし,その形態,大きさ,血流,エラストグラフィ所見を検討した。形態は,急峻なだらか乳管内に充実性部分が充満乳管と連続する充実性腫瘤様所見の4つに分類した。乳管内病変のうち乳癌は9例,2.7%(対象期間の受診者の0.04%)と少なく,現在の判定基準に則ると97.3%が偽陽性となることがわかった。また,乳管内充実性部分の形態が急峻あるいは5mm 以下に乳癌は1例もなかった。乳癌9例中8例は血流信号を認め,血流信号なしの1例も3mm の低悪性度のDCIS であった。立ち上がり急峻あるいは5mm 以下の所見を精検不要とすれば,現時点で要精検としていた症例334例中186例(55.7%)が,さらに血流信号なしを加えると269例(80.5%)が精検不要となり,生命予後にかかわる乳癌を見落とすことなく偽陽性を減少させることができるのではないかと考えられた。
  • 真田 知佳, 渡辺 直樹, 大塚 翔子, 小坂 麻耶, 北川 遥香, 川 賢祐
    2022 年 31 巻 2 号 p. 211-216
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/07
    ジャーナル 認証あり
    当院乳腺外科に受診される主訴では,自己触知,市町村などでのMMG 検診,開業医などでの施設定期検診発見異常の3つが主である。クーポンによる行政検診が始まっている現在でも,当院では57.1%を超える症例が自己発見である。そもそも乳腺の解学的観点より各領域の腫瘍発生分布が存在することは知られている。発見方法によらず,自然発生分布と発見分布は一致するはずである。症状が認められるまで医療の関与がない自己触知で発見された腫瘍の分布は,最も自然発生分布を反映しうるのではないか。それと比較して,施設検診,MMG(のみによる)検診では,乳腺の各区域の腫瘍発見分布に解離がないか,後ろ向きに検討した。2010年から2021年まで,先述の3つの主訴で当院を受診された3005症例を対象とした。自己触知で発見された症例の内,主たる異常の存在部位をABCDE 区域に分類した。それぞれn(%)で表し,A:392(25.3%),B:154(9.9%),C:689(44.5%),D:153(9.9%),E:160(10.3%)であった。施設検診ではそれぞれA:83(23.1%),B:35(9.7%),C:151(41.9%),D:47(13.1%),E:44(12.2%)と,p=0.3053となり有意差はなかった。MMG 検診ではA:214(26.7%),B:63(7.8%),C:366(45.6%),D:102(12.7%),E:58(7.2%)と,p=0.0144と有意差を示した。特にE 区域の発見に弱さを示している可能性が示唆され,他発見方法とMMG 検診での発見分布に解離が見られた。逆にMMG 検診では発見時Stage では施設検診よりもむしろ優れており(p<0.0001),感度の問題ではなく,乳腺濃度分布によってE 区域の腫瘤に対し感度が低い可能性が考えられた。
feedback
Top