日本乳癌検診学会誌
Online ISSN : 1882-6873
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原著
乳房超音波検診においてすべての乳管内病変を要精検とするべきか
吉田 泰子 角田 博子剱 さおり鵜澤 郁子八木下 和代鹿股 直樹
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2022 年 31 巻 2 号 p. 203-210

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抄録

現在の乳房超音波診断ガイドライン第4版の検診の要精検基準では,乳管内充実性病変はすべて要精検とすることとなっている。しかし,検診の場で遭遇する乳管内病変は乳管内乳頭腫をはじめとする良性病変の頻度が高く,不要な精検を多くしている要因と思われる。そこで,検診で指摘された乳管内病変の結果を後方視的にレビューし,その実情を把握して超音波所見の中で精検不要とできる指標がないかを検討することを目的とした。 2016年1月~2020年12月に当施設で乳管内病変として指摘された334所見を象とし,その形態,大きさ,血流,エラストグラフィ所見を検討した。形態は,急峻なだらか乳管内に充実性部分が充満乳管と連続する充実性腫瘤様所見の4つに分類した。乳管内病変のうち乳癌は9例,2.7%(対象期間の受診者の0.04%)と少なく,現在の判定基準に則ると97.3%が偽陽性となることがわかった。また,乳管内充実性部分の形態が急峻あるいは5mm 以下に乳癌は1例もなかった。乳癌9例中8例は血流信号を認め,血流信号なしの1例も3mm の低悪性度のDCIS であった。立ち上がり急峻あるいは5mm 以下の所見を精検不要とすれば,現時点で要精検としていた症例334例中186例(55.7%)が,さらに血流信号なしを加えると269例(80.5%)が精検不要となり,生命予後にかかわる乳癌を見落とすことなく偽陽性を減少させることができるのではないかと考えられた。

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